今回はネット生命保険会社の走りとも言えるライフネット生命を分析していきます。
安くてすぐ申し込めるネット保険いいですよね。
ライフネット生命保険の概要
ライフネット生命は2006年に創業した比較的新しい保険会社です。
名前の通りのネット生命保険会社ですが、2009年にオンラインでの生命保険販売を日本で初めて開始しました。
2019年3月期は経常収益が126億円ですが、来期は経常収益162億円を見込んでおり、どんどん事業を拡大しています。
まずはライフネット生命保険の業績分析を行なっていきたいと思いますが、その前に保険業界特有の会計用語の紹介をしていきます。
保険会社の会計用語
保険業界は財務諸表も特殊で流動資産の概念もなく少し特殊で、他業種と比較がしにくい業界です。
そのため、保険会社の業績を分析する際には保険業界特有の会計用語を理解する必要があります。
今回は、保険業界特有の会計用語のうち、特に重要と思われる用語を3つ紹介します。
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ソルベンシー・マージン比率
保険会社がどの程度の支払余力をもっているかを示す指標です。
この数値が高ければ、仮に想定外の保険料支払いが発生しても問題なく事業経営をしていくことができます。
保険会社の財務健全性を判断する指標の一つと言えます。
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危険差益
保険料計算をする際には、年齢別などの死亡者数を予測し、死亡率を算出します。
この予定死亡率はあくまで統計上の予測であり、実際の死亡率と差が生じますが、この差によって保険会社に生じる利益のことを危険差益、死差益と呼びます。
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エンべディット・バリュー
エンベディッド・バリューとは、すでに実現している利益である修正純資産と、将来的に実現する保有契約価値の合計額のことを指します。
生命保険は獲得時に多くの費用がかかりますが、収入は契約後の定期収入となります。
この結果、契約締結と利益が出るまでにタイミングのズレがあるため、業績と実際の収益力に差が生じます。
そこで、生命保険会社の保有する保険の価値を「エンベディッド・バリュー」方式で算出することで、実際の収益力がどれだけかを判断することができます。
簡単に言えば、保険の現在価値みたいなものですね。
他にも投資・会計用語の解説はこちらにもまとめてあるので、参考にしてみてください。
保険会社のソルベンシー・マージン比率の比較
早速ですが保険会社のソルベンシー・マージン比率を比較していきたいと思います。
ご覧の通り、ライフネット生命は他社に比べ非常に高いソルベンシー・マージン比率をキープしており、財務健全性は比較的高そうです。
では次に、ライフネット生命保険の業績推移を確認していきます。
ライフネット生命保険の業績推移
直近の10年間の純利益や株主資本の推移を見ていきます。
参考:ライフネット生命保険決算短信より管理人作成
真っ赤っかです、、、
直近の10年間では黒字になったことがなく、株主資本もどんどんと減少していってます。
2012年に株主資本が112%の成長を遂げていますが、これは株式上場による影響で一時的な改善だったと思われます。
ライフネット生命保険の分析と株価予想
ここまでのデータを元にライフネット生命の今後の株価予想をしていきます。 まずは定量的な分析からです。
EPS成長率が▲2.4%、株主資本成長率が▲7%となっており、ライフネット生命がどんどんと資産を減少させていっているのが分かります。
今後も今までの10年間と同程度の成長率が維持できるとの仮定のもと、将来の株価を予想していきます。
現在の成長率を維持していくと【妥当】レベル、【保守的】レベルともに▲100.3%の投資リターンのシミュレーションとなし、ライフネット生命は投資対象として全く魅力的でないう結果になりました。
※10月21日時点の株価:692円 PER 14倍にて算出
この予測株価におけるPBRはマイナス値となり、計算できませんでした。
結論
ライフネット生命は投資向きではないが面白い割安銘柄
投資シミュレーション結果は▲100%と残念な結果になってしまいました。
ソルベンシー・マージン比率の推移を見ると、ここ3年の平均値が2,421%と健全性は高いので、早々に倒産したりはしなさそうです。
一方で、2019年3月末で貸借対照表に記載されている有価証券が310億円、現金が12億円、金銭の信託が31億円のあります。
また、エンベディッド・バリューは634億円です。
それに対して時価総額は353億円なので、割安感はある気がします。
ここ10年間は赤字幅が全く安定しませんが、赤字額の安定と縮小が見られた段階で、もし割安なら投資しても良さそうだなと感じました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ネット保険が当たり前になってきて、古参保険会社が競合となる中で、オンライン保険会社のはしりとして名高いライフネット生命ですが、業績は残念な形になっています。
その一方で割安感もあるので、ライフネット生命がどんな強みを発揮できるかで業績がかなり変わってきそうですね。
今後強みが発揮された際は大化けする銘柄かもしれません!
どのような企業に投資をする際にも、今回のような分析は必須です。
今回は簡単な業績分析から株価を予測してみましたが、管理人が財務分析などの定量分析をする際は下記のような方法で行なっています。
また、今回は定性分析は行なっていませんが、定性分析をする際はこのような手法で行うことが多いです。
>> 企業の定性分析 〜定性分析の手法:3つのフレームワークで分析してみる〜
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