今回は三菱・三井に並ぶ財閥系商社である住友商事(8053)の分析をしていきます。
住友商事(8053)の分析まとめ
- メディアや建機、航空機リースなど非資源分野に強み
- 2010年代からは資源分野にもテコ入れしてきた
- 金属や原油といった資源価格の影響を受けやすい
- リスクを取るだけのリターンが本当にある?
- 割安ではあるので、業績を注視しながら投資はあり
- こだわりがないのであれば、伊藤忠や三菱商事の方が投資対象としては魅力的
それでは詳しく見ていきましょう。
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住友商事(8053)の概要
住友商事(8053)は住友グループの中核企業となっている総合商社です。
非資源分野に強みを持っていましたが、2010年代から資源分野にも力を入れてきており、他の総合商社が非資源分野のテコ入れをする中で真逆の経営方針で進んできました。
しかし、2014年には投資による減損損失が▲2,700億円発生するなど、住友商事の減損ニュースは心なしか多い気がします。
住友商事(8053)の事業セグメントは以下の6つの事業に分かれています。
- 金属事業
- 輸送機・建機事業
- インフラ事業
- メディア・デジタル事業
- 生活・不動産事業
- 資源・化学品事業
それぞれの詳細は下記のようになっています。
- 金属事業
自動車や航空機、パイプラインなどに使われる鉄鋼製品やアルミ、チタンなどの非鉄金属製品を扱っている事業セグメントです。
2020年3月期の売上は1兆2,347億円、利益は▲500億円となっています。
- 輸送機・建機事業
船舶・航空宇宙ビジネスや建機販売代理店・レンタル事業などを行っている事業セグメントです。
住友商事の航空機リース事業は世界トップクラスの実績を誇ります。
2020年3月期の売上は7,909億円、利益は300億円となっています。
- インフラ事業
水道や電力、鉄道などのインフラ事業や再生エネルギー発電事業、エネルギーマネジメント事業などを行っている事業セグメントです。
2020年3月期の売上は5,370億円、利益は617億円となっています。
- メディア・デジタル事業
SIerであるSCSKや日本最大のケーブルテレビであるJ:COMもこのセグメントに属しています。
デジタルメディア関連事業や携帯電話通信事業などを行なっている事業セグメントです。
2020年3月期の売上は3,887億円、利益は383億円となっています。
- 生活・不動産事業
スーパーやドラッグストアの運営事業、食品や穀物の流通事業、オフィスビルや商業施設などの開発などを行っている事業セグメントです。
横浜のクイーンズスクエアやテラスモール湘南なども住友商事による不動産開発案件です。
2020年3月期の売上は1兆205億円、利益は513億円となっています。
- 資源・化学品事業
製薬事業や化粧品事業、鉱山開発、石油開発事業などを行っている事業セグメントです。
2020年3月期の売上は1兆1,319億円、利益は432億円となっています。
参照:住友商事 事業紹介 より
資源・化学品事業とインフラ事業が他事業と比べて少し寄与率が高いですが、全体的な事業の利益バランスは良さそうです。
事業ポートフォリオのバランスはよく、伊藤忠商事(8001)とよく似ていると言えます。
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過去の資源価格の暴落や投資損失によって大きく利益を減らしてきた過去もあり、リスク管理体制に少し不安が残りますが、今期はきっちり黒字着地しているのは評価できますね。
住友商事(8053)の業績推移
まずは、住友商事(8053)の過去10年間の業績推移を見ていきます。
参考:住友商事 決算公表資料 より管理人作成
業績が凸凹しておりあまり安定していないのがわかります。
特に2015年3月期は大きな減損損失があった関係でマイナス決算になってしまっていますね。
次に過去2年間の各セグメントの売上収益を見ていきます。
参考:住友商事 決算公表資料 より管理人作成
住友グループの力を存分に活かせる『金属事業』と、力を入れてきた『資源・化学品事業』が売上の50%弱を占めています。
インフラ事業の売上も多く、重厚長大な事業の売上が多くなっているイメージを持っておけば良さそうですね。
もっとも、商社のビジネスは卸売業であるため売上収益の規模にはさほど意味がありません。
売上収益よりも、どれだけ利益を上げたかの方が重要になります。
最後にセグメント別の利益推移を見ていきます。
参考:住友商事 決算公表資料 より管理人作成
『メディア・デジタル事業』のJ:COMや『生活・不動産』などの以前からの強みである非資源分野は安定した業績を確保できています。
利益構成は比較的分散されていますが、今期に限っては『金属事業』の利益が大きくマイナスとなっており全体の業績も大きく落ち込んでいます。
伊藤忠商事と住友商事は、利益が分散されており少し事業構造が似ていますね。
三井物産は全体利益の半分近くを金属資源分野で稼ぎ出しており、伊藤忠や住友商事とは対照的な企業ですね。
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住友商事(8053)の株価分析・株価予想
まずは住友商事(8053)の過去10年間の業績推移を分析していきます。
平均ROEは8.6%と標準的な水準になっています。
一方で、平均EPS成長率は▲1.71%とマイナス成長になっており、安定した業績確保ができていないことを示していますね。
PERは8.7倍、PBRが0.6倍前後となっており、他の総合商社と同程度の水準になっていますが、一般的な水準から比べると割安なように思えます。
住友商事(8053)はバランスの良い利益構造を持っていますが、資源分野へ注力した要因もあり業績が安定しておらず、リスクに対してそれほど強い体制を築いているとは言えないと考えられます。
リスク管理体制が整い、安定した業績が確保できるまでは凸凹とした業績推移が続くという想定のもと、現在までの成長水準などをキープした場合の8年後の住友商事(8053)の株価予想は以下のようになります。
現在の成長率を維持していった場合、【妥当】レベルで77.0%、【保守的】レベルで44.4%の投資リターンが望める予想となっており、住友商事(8053)は少し魅力的な銘柄という結果になりました。
※2020年5月22日時点の株価 1,203円を元に、PER10倍にて算出
この予想株価におけるPBRは【妥当】レベルで0.9倍、【保守的】レベルでは0.7倍となっており、現在の0.59倍というPBRと比べて少し高めの水準となりました。
EPSはマイナス成長ですが、BPSはプラス成長していたためリターン予想がこのような結果になりましたが、考えるべきは、この予想リターンがリスクに見合うかという点です。
住友商事(8053)に投資する際はタイミングが非常に重要で、住友商事から出されるIRニュースで投資情報などを常に注視しながらタイミングを図るべきと言えるでしょう。
結論
住友商事(8053)は少し魅力的な銘柄だが、リスクを取るだけのリターンがあるかは微妙
住友商事(8053)は住友グループの中核企業として世界中で幅広くビジネスを行っています。
業績は凸凹と推移しており、ROEは8.6%、成長率は▲1.7%と数値上はそこまで魅力的ではない企業と言えそうです。
株価水準はPERは9倍弱、PBRは0.6倍前後と割安水準です。
今後も同レベルの成長を続けた場合、8年後にトータルリターンが80%弱程度は確保できるという予想になりました。
一方で、リスク管理体制に疑問が残ります。
リスクを取るだけのリターンがあるかと言われると微妙な水準で、これであれば伊藤忠商事(8001)や三菱商事(8058)に投資した方がメリットがありそうな気はします。
とは言え、住友商事(8053)自体は割安ではあるので、投資対象として選択肢には入りそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
住友商事(8053)は分散された事業ポートフォリオを持つ総合商社で、少し魅力的な銘柄であるということがわかりました。
事業は分散されている一方で、資源価格に影響を受けやすく、何度も様々な投資で減損損失を計上していることから、リスク管理が徹底されているとは言い切れなさそうです。
ROEは標準的で成長率はマイナスになっており、そこまで魅力的な企業とは言い難いです。
ただし、割安なことには変わりないので、投資した場合でもリターンは見込めそうです。
個人的には、住友商事に投資するなら他の商社に投資をしようと思います。
どのような企業に投資をする際にも、今回のような分析は必須です。
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