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【誰でも使える!】財務分析の方法5選

【誰でも使える!】財務分析の方法5選

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企業は様々な方法で利益を作っており、業態は自動車製造からITシステムの導入支援まで様々です。
では、どちらの方が『優秀な企業』と言えるのでしょうか?

優劣を決めるためには分析が必要です。

今回は定量分析の一つである財務分析について紹介していきます。

目次

財務分析の準備:財務三表とは?

財務分析とは企業から開示されている情報、特に『財務三表』に基づき分析を行う方法です。

まず財務三表とは

  1. 損益計算書
  2. 貸借対照表
  3. キャッシュフロー計算書

の3つを指します。

損益計算書

企業の稼ぎ出す利益等が記載されている諸表です。
売上高や営業利益、当期純利益等が載っており、会計的にはフロー部にあたります。

感覚的には企業の1年間の成績表といった感じです。

貸借対照表

企業のもつ資産や負債が記されています。
売掛金や固定資産が資産部分に、長期借入金等が負債部分に記載されています。

よく聞く『自己資本比率』も貸借対照表で計算できます。
企業のこれまでの成績結果といった感じです。

キャッシュフロー計算書

企業のお金自体の流れが記載されています。
キャッシュフロー計算書は以下の3つのカテゴリに分かれます。
  • 営業活動によるCF
恒常的な営業活動による現金の流れが記載されています。
したがって、『営業活動によるCF』は売上の入金があれば増加しますし、買掛金を支払った場合には減少します。
もちろんプラスの方がいい指標です!

  • 投資活動によるCF
投資活動(設備投資やM&A他)に伴う現金の流れが記載されています。
例えば機械の購入を行った場合には、現金支出がありますので『投資活動によるCF』は減少します。
マイナスの企業は資本を投下して積極的に成長しようとしている企業と言えるでしょう。

  • 財務活動によるCF
財務的な経営判断に伴う現金の流れが記載されています。
例えば、借入れを行った際は、現金が増えますので『財務活動によるCF』が増加します。
プラスであれば借入れ等が増加しており、マイナスであれば減少しているという捉え方です。
成長しようと投資をしている企業は、大幅なプラスであることが多いです。

具体的な財務分析の方法

ここからはより具体的に使える財務分析のテクニックや指数を紹介していきます。
色々な指数を紹介しますが、ある指数が優秀だからといって安心してはいけません。

指数の意味を理解し、業界にマッチする指数を使うことで、より正確に同業他社と分析することが可能です。

企業力指数

下記5つの指数の平均が企業力指数となります。
簡単なスクリーニングにぴったりの指数だと言えます。
詳しくは企業力指数とは?をご覧ください。

収益性分析

企業の収益の効率性を判断する指標です。
大きく分けて3種類の収益性分析方法がよく使われています。

ROA(総資本利益率):営業利益 ÷ 総資産

総資産をどれだけ効率的に活用して利益を出せているかを示す指標です。

設備投資が多い重厚長大な産業は低めの数値で、IT等は高めの数値が出ます。
ITの方が効率的と言えそうですが、逆に言えば、重厚長大な業界は圧倒的な資本投下が必要なので、その業種であること自体が参入障壁となっていると言えます。

ROE(自己資本比率):営業利益 ÷ 自己資本

自己資本に対してどれだけ効率的に稼げたかを示します。

企業のIR資料等でもよく見られる言葉で、ROEが高い=より効率的に資産を活用していると言えます。
ちなみに、日本企業のROE(ROAもですが)は海外に比べ総じて低いと言われています。

営業利益率:営業利益 ÷ 売上高

営業利益率を同業種で比較すれば、どちらが無駄なく経営されているかがわかります。

経常利益を用いないのは、営業外収益が入ってしまうからですが、投資会社のようになっている企業もありますので、そういう企業は経常利益で算出する方が理論的です。

安全性分析

企業の存続の安全性を判断する指標です。
大きく分けて4種類の安全性分析方法がよく使われています。

流動比率:流動資産 ÷ 流動負債

短期的な支払能力を測定する指標で、一般的に120%程度が望ましいと言われています。

流動比率が高ければ、短期支払能力が高いと言えるのでキャッシュが底をつき破綻という可能性が減少すると考えられます。
これよりもさらに厳しい基準にする際には『当座比率』という指標を用います。

現預金月商比率:現預金 ÷( 売上 ÷ 12 )

短期的にキャッシュが十分かを判断する指標です。

例えば、災害等で売上が0の期間があっても、現預金月商比率が十分にあれば経費を払ってもキャシュが底をつき破産という心配も少なくなります。

固定比率:固定資産 ÷ 自己資本

数式通りで、固定資産への投下資金と自己資本の比率をみるためのものです。

どれだけの割合が返済義務のない自己資本でカバーされているかを測ることで、財務上の安定性を観るのに役立ちます
なので、100%以下であるのが望ましいとされています。

自己資本比率:自己資本 ÷ 総資産

一番有名な指標です。
一般的には30~40%くらいあれば十分と言われています。

自己資本比率は高ければ借入が少なく健全と言えますが、個人的には高すぎるのもどうかと思います。
高すぎる自己資本比率=成長する意欲があまりない?とも考えられるからです。
現状維持は衰退と同義だと思いますので、適度な自己資本比率が良いと思っています。

成長性分析

企業の存続の安全性を判断する指標です。
大きく分けて3種類の成長性分析方法がよく使われています。

固定資産回転率:売上高 ÷ 固定資産

売上をつくるのに何回固定資産を回したかを示す指標です。

したがって、数値が高ければ効率的に固定資産を使って経営しているということになります。
逆に、この数値が何年間も低いままであれば、過剰な設備投資を行っていると言えますので、決して良いお金の使い方をしているとは言えませんし、今後も同じ傾向である可能性を考えると、キャッシュ面でも不安が残ります。

在庫回転率:売上高 ÷ 棚卸資産

在庫をどの程度持たずに経営しているかを示す指標です。

したがって、在庫が少ない会社はこの数値が高くなりますので、在庫の側面からは効率的に経営していると言えます。
加えて、在庫を少なくすることでCFが増加しますので、財務安定性面からも良い評価ができます。

財務レバレッジ:1 ÷ 自己資本比率

どれだけリスクをとって成長しようとしているかを示しています。

高ければ成長意欲は高いと言えますが、安定性は落ちていきます。
個人的には、これも適度な水準が良いと思っています。

キャッシュフロー分析

企業が存続するためにはキャッシュを十分に稼いでいる必要があります。
ここでは3種類のキャッシュフロー分析手法を紹介します。

売上債権回転率:売上高 ÷ 売上債権​

債権回収の効率性をみる指標で、数値が低いほど債権回収に時間がかかることを示しています。

飲食店等のキャッシュ業界は数値が高い傾向にあります。
この比率が低いと資金が拘束されるので、CF的には良くないということになります。

仕入債務回転率:売上原価 ÷ 仕入債務

売上債権回収率と同様に、支払いの効率性をみる指標で、数値は低いほど支払いに時間がかかることを示しています。

この数値が大きく低下している時は要注意です。
この数値の低下には

  • 支払い条件を良くしてもらった
  • 支払いができないので延ばしてもらっている
という2つの可能性が考えられるからです。

もし支払いを先延ばしにしている状態であれば、キャッシュが逼迫していると言えますので、企業の財務安定性を確認する必要があります。

売上債権回転期間・買入債務回転期間

  • 売上債権回転期間:売上債権 ÷(売上高 ÷ 365日)
  • 買入債務回転期間:仕入債務 ÷(売上原価 ÷ 365日)
債権と債務の回転期間を比較することで、営業上CFが必要な経営態勢かどうかがわかります。

買入債務回転期間>売上債権回転期間ならば、買掛金の支払前に売上が入ってきますので、究極的には赤字でもCF的には安定していると言えます。

財務分析のまとめ

よく使われる代表的な財務分析の指標をまとめてみましたがいかがだったでしょうか?

このように様々な財務分析指標がありますが、例えば「流動比率なら120%」という基準があります。
しかしこれが絶対の基準というわけではありません。
業種によっても基準は違いますし、投資等の一時的なキャッシュアウトにより、キャッシュフローが悪化しているケースもあります。

なので、業界に合わせた基準や、企業の個別状況も加味する必要があります。
これが、財務分析指標は簡単だけど奥が深いと言われる理由です。

実際にやってみるのが一番なので、いろいろな企業を分析して、感覚を養ってみてください。

ビジネス自体を分析できる定性分析に関してはこちらもどうぞ。

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