【株価分析】金属資源とエネルギーが強い三井物産(8031)の分析と株価予測

今回は5大総合商社の一角を形成する三井物産(8031)の株価分析をしていきます。

管理人は元総合商社マンですが、三井物産に憧れを持っていました。笑

三井物産(8031)の分析まとめ

  • 安定した業績を誇る5大総合商社のひとつ
  • 原油市場の影響で来期の業績予想は2020年3月期比で▲54%
  • 指標的には割安だが、来期の成績次第では割高になる可能性も
  • 投資対象として魅力的だが、原油やコロナの影響は注視

それでは詳しく見ていきましょう。

総合商社の雄『三菱商事』はこちらで分析しています。

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三井物産(8031)の概要

三井物産は三井グループの中核をなす総合商社です。

歴史は古く明治時代から様々な商材の流通に関わり現在では総合商社としての地位を揺るぎないものにしています。

商社の取り扱い商材は「カップラーメンからロケットまで」と言われるほど多岐に渡りますが、三井物産は特に金属資源や原油などの資源・エネルギー分野と、発電や港湾などのインフラ分野を強みとしています。

 

三井物産(8031)の事業セグメントは以下の7つに分かれています。

  • 鉄鋼製品セグメント
  • 金属資源セグメント
  • エネルギーセグメント
  • 機械・インフラセグメント
  • 化学品セグメント
  • 生活産業セグメント
  • 次世代・機能推進セグメント

 

それぞれの詳細は下記のようになっています。

  • 鉄鋼製品セグメント

自動車産業やインフラ産業に対し、様々な種類の鉄鋼製品の調達・供給などを行なっている事業セグメントです。

2020年度の売上は2,501億円、利益は47億円となっています。

 

  • 金属資源セグメント

地下資源と地上資源を対象にして事業運営や投資事業などを行なっている事業セグメントです。

具体的には鉄鋼石や石炭の鉱山開発(地下資源)、アルミニウムや冷鉄源(地上資源)のリサイクル推進などです。

2020年度の売上は10,752億円、利益は1,833億円となっています。

 

  • エネルギーセグメント

石油やLNG/天然ガスに代表されるエネルギー資源の探鉱や採掘から輸出入までを行なっている事業セグメントです。

米国のシェール関連事業やバイオ燃料事業、排出権創出事業などもこちらのセグメントに含まれています。

2020年度の売上は8,937億円、利益は597億円となっています。

 

  • 機械・インフラセグメント

電力発電事業や港湾開発事業、鉄道開発などに代表されるインフラ系事業から、自動車、ヘリコプター、航空機のリース・ファイナンス事業、船舶の運航事業に至るまで、幅広くビジネスを展開している事業セグメントです。

2020年度の売上は9,118億円、利益は875億円となっています。

 

  • 化学品セグメント

メタノールや塩田、合成ゴムや農薬などの基礎化学品、機能材料商品に対し、事業投資やトレーディングをしている事業セグメントです。

2020年度の売上は15,442億円、利益は223億円となっています。

 

  • 生活産業セグメント

食料品のサプライチェーン構築や小売り事業の展開、ヘルスケア分野での流通を担っている事業セグメントです。

アジア最大手の病院グループであるIHHへの出資や、有名ブランドであるポール・スチュアートの買収なども行なっています。

2020年度の売上は20,181億円、利益は320億円となっています。

 

  • 次世代・機能推進セグメント

AI/IoT関連事業やデータ分析事業、アセットマネジメント事業、貴金属などのコモディティ取引、企業投資などを行なっている事業セグメントです。

2020年度の売上は1,854億円、利益は146億円となっています。

 

総合商社だけあってかなり多岐にわたって事業展開をしているのがわかります。

三井物産は金属資源やエネルギーセグメントの比重が大きいので、コモディティ商品の相場状況により他の総合商社と比較して利益がブレやすくなるのが特徴と言えそうです。

三井物産(8031)の業績推移

三井物産(8031)の過去10年間の業績は以下のようになっています。

三井物産 8031 業績推移

三井物産 8031 業績推移 グラフ

参考:三井物産株式会社 IR資料室 より管理人作成

 

さすがは5大商社ということで、業績は10年間の間比較的安定して推移しています。

EPSの推移も比較的順調ですし、株主資本も右肩上がりに推移しています。

なお、2016年度に赤字に陥っているのは、三井物産の強みであるエネルギー市況の低迷により、米国シェールガス開発事業や油田・ガス田事業による減損損失などが主な原因で、その後、三井物産は非資源分野を強化する動きを見せています。

 

次に、セグメント別の業績推移は下記のようになっています。

三井物産 8031 セグメント売上 セグメント別売上収益 売上収益 推移

参考:三井物産株式会社 IR資料室 より管理人作成

 

強みである『金属資源』や『エネルギー』などの売上収益はそこまで大きくはない代わりに、『化学品』『生活産業』部門の売上収益が非常に大きく、2部門で全体の半分以上の売上収益を確保しています。

過去3年間の各セグメントの売上収益構成比は以下の様になっていました。

三井物産 8031 セグメント売上 セグメント別売上収益 グラフ

参考:三井物産株式会社 IR資料室 より管理人作成

 

もっとも、商社のビジネスは卸売業であるため売上収益の規模にはさほど意味がありません。

売上収益よりも、どれだけ利益を上げたかの方が重要になります。

そこで、最後にセグメント別の利益推移を見ていきます。

三井物産 8031 セグメント利益 セグメント別利益 推移

参考:三井物産株式会社 IR資料室 より管理人作成

 

見ての通り半分近くを金属資源分野で稼ぎ出しているにが印象的で、2018年3月期においては全体の60%程度の利益を稼ぎ出しています。

過去3年間平均の各セグメントの利益構成比は以下の様になっていました。

三井物産 8031 セグメント利益 セグメント別利益 グラフ

参考:三井物産株式会社 IR資料室 より管理人作成

 

強みである『金属資源』『エネルギー』『機械・インフラ』部門の合計利益が全体の利益の87%を占めており、大きく偏りがあります。

また、『生活産業』や『次世代・機能推進』部門などは増益方向に推移しており、非資源分野を強化している結果が見えます。

三井物産(8031)の株価分析・株価予想

まずは三井物産(8031)の過去10年間の業績推移を分析していきます。

三井物産 8031 業績分析 株価分析

平均ROEは9.1%と一般的な水準になっており、比較的効率的に事業運営ができていそうです。

平均EPS成長率も3.35%としっかりと成長しています。

一方で、PERが7.2倍、PBRが0.71倍となっており現在の株価水準は比較的割安なように思えます。

 

三井物産(8031)は三井グループの中核企業として幅広いビジネス領域で6兆円を超える売上収益をあげています。

商社は『人』『ネットワーク』がモノをいう業界ですが、三井物産への就職人気や現在まで培ってきた国内外での広いネットワークは、総合商社として継続して競争力を確保できる基盤があることを示しています。

また、総合商社は概してビジネス領域が広く世界中の事業会社への投資を行っているため、ビジネスモデル自体でのリスク分散ができていることから、長期視点の今後の業績は現在までと同程度の成長水準を確保できる可能性が高いと考えています。

ただし、三井物産(8031)の場合は、金属資源とエネルギーセグメントの業績寄与率が高く、こちらはリスクとして認識すべきところと言えそうです。

 

上記の仮定のもと、8年後の三井物産(8031)の株価予想はこちらになります。

三井物産 8031 株価予測 株価予想

現在の成長率を維持していった場合、【妥当】レベルで112.4%、【保守的】レベルで63.1%の投資リターンが望める予想となっており、三井物産(8031)は魅力的な銘柄という結果になりました。

※2020年5月8日時点の株価 1590.5円を元に、PER10倍にて算出

この予想株価におけるPBRは【妥当】レベルで0.9倍、【保守的】レベルでは0.7倍となっており、現在の0.71倍というPBRと比べて同程度のPBRで比較的割安な水準となりました。

 

一方で、三井物産(8031)は2021年3月期の業績予測を2020年3月期比で▲54%の1,800億円としています。

新型コロナの影響によって、原油の需給バランスの崩壊や市況の変動が起こっていることや製造メーカーなどの生産ラインや物流網の停滞などによる経済活動の低下が主な原因と予想されますが、コロナ影響がより長期にわたるものになると、更なる減益も想定しなくてはいけないかもしれません。

結論

三井物産(8031)は魅力的な銘柄だが、今後の原油市況やコロナ影響を注視する必要がある

 

三井物産は総合商社として世界中のネットワークを駆使して幅広にビジネスを行っています。

業績も順調に推移しており、ROEも9%超で株価水準も割安なことから投資対象としては魅力的で、8年後のトータルリターンで100%を超える可能性もあるという結論に至りました。

ただし、注意すべき点としては三井物産(8031)の事業ポートフォリオは資源・エネルギーの寄与率が非常に高いため、コモディティ市況の変動により大きな減損損失を計上する可能性があります。

したがって、投資対象としてはビジネスも堅調な上に割安で魅力的ですが、コモディティ市況に注意して投資をすべき対象と言えそうです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

三井物産(8031)は事業内容や業績が魅力的な一流総合商社で、投資リターンも見込める魅力的な銘柄であるということがわかりました。

一方で、事業ポートフォリオの偏りから原油や金属資源の市況に業績が大きく左右されると考えられます。

したがって、投資をする際は原油市況、コモディティ市況も見ながら投資タイミングを測る銘柄と言えそうです。

また、配当は現在80円で配当利回りが5%超となっていますし、2023年3月期までは現在の80円を下限とする方針であることから、配当に関してはそこまで心配する必要はなさそうです。

個人的には、三菱商事よりも事業ポートフォリオに偏りがあることから、商社に投資する場合のプライオリティは三菱商事>三井物産となりそうです。

 

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