世界最大の書店作りから始まり、現在ではAmazon PrimeやAmazon Web Servicesなど多彩な事業を展開するAmazon(AMZN)の企業分析と株価分析をしてみました。
管理人の休日の8割はAmazon Primeで構成されています。
アマゾン(Amazon)の概要
言わずとしれたAmazonですが、事業内容は大きく5つに分かれます。
- EC事業
オンラインストアでの販売事業です。有名すぎるので割愛します。
- オフラインストア事業
実店舗での販売事業です。 Amazonが買収したホールフーズが中心となるセグメントです。
- AWS事業
Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスが Amazon Web Service 通称 「AWS」の事業です。
かなりの高利益率を誇る事業ですが、詳細は後述します。
- Amazon Prime事業
こちらもかなり有名なサブスクリプションサービスです。
Amazon Prime会員になると様々な映画が視聴できたり、配達サービスが向上するなどのメリットがあります。
- 広告事業
AmazonのECサイト内などへの広告掲載事業です。
上記の通り、オンラインベースで様々な事業を行なっているAmazonですが、イメージ通り業績は急拡大しています。
アマゾン(Amazon)の業績推移
Amazonは比較的歴史も浅い会社ですが、成長が著しく「The Big Four」「GAFA」と呼ばれるまでに巨大な企業となりました。
2018年の売上は2,400億ドル(約25兆円)で利益もどんどん伸びています。 まずは、直近の10年間の純利益や株主資本の推移を見ていきます。
参考:Amazon IR情報を元に作成
利益面は赤字のこともありますが、特に直近5期での利益の伸びが印象的です。 これをセグメント別に分解してみると、下記のようになります。
参考:Amazon IR情報を元に作成
事業セグメントは北米、海外、AWSの3セグメントに分かれていますが、AWSは5年間で営業利益が10倍になっています。
AWSの躍進が凄まじいことがよく分かりますね!
アマゾン(Amazon)の競合
Amazonの事業は大きくオンライン小売とWebサービス(AWS)に分けられますが、双方の事業とも競合は世界的な企業ばかりです。
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オンライン小売事業
Amazonのメインビジネスとも言えるオンライン小売は2018年の売上高が1,230億ドル(約13兆円)と非常に規模が大きいです。
多くの商品セグメントや国でシェアトップのAmazonですが、アメリカ国内ではWalmartやe-bay、アジア圏ではAlibabaや楽天などが競合として挙げられます。
オンラインストアは便利で一度使ったら離れられなくなるので、今後もEコマース市場は拡大が見込めそうです。
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クラウドサービス『AWS』
Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスが Amazon Web Services 通称 「AWS」です。
クラウドコンピューティングサービスには大きく分けて3つの種類があります。
- IaaS(Infrastructure as a Sarvice)
仮想サーバーなどの機材やネットワークなどのインフラ環境をクラウド上で提供します。
IaaSを通して、ユーザーは大きなインフラ投資をすることなく、最適な形でインフラを利用できます。
- PaaS(Platform as a Service)
データセンターや開発環境、オペレーティングシステムなどをクラウド上で提供しており、ユーザーが開発のプラットフォームとして利用できます。
開発者はアプリケーションの開発に専念することができるのがメリットです。
- SaaS(Software as a Service)
ソフトフェアがクラウド上で提供されることを指し、ユーザーはネットワーク経由でソフトウェアを使用できるので、インストールが必要なくなります。
よく使われているSaaSサービスとしてはGmailなどが挙げられます。
AWSは主にIaaS/PaaS市場でサービスを提供しており、IaaS市場では「Amazon Elastic Compute cloud」、PaaS市場では「Amazon Web Service」です。
IaaS市場での競合はGoogleの「Google Compute Engine」やIBM、 PaaS市場での競合はMicrosoft「Azure」やAlibabaの「Alibaba cloud」、Googleの「Google cloud platform」などが挙げられます。
ご覧の通りクラウドサービス市場はかなり競争が激しい市場ですが、AWSは市場でかなりのシェアを取っています。
AWSの強み
IaaS市場やPaaS市場でかなりのシェアを取れているAWSですが、この『AWSの強み』を調べてみました。
- 柔軟で最適化された料金体系
今までは定額契約などで固定費であった費用を、使った分だけのコストとできます。
また、必要に応じてキャパシティを増減できるので便利です。 要は無駄な投資をせずに、最適な形と料金で始められるということです!
- 運用や保守などが簡単で便利
オフィス内に設けるものではないので、データセンターの運用や保守など手がかかる作業はAWSがやってくれます。
一番面倒な運用・保守をやってもらえるのは魅力的ですね!
- サービスの展開がすぐに行える
クラウドであるがゆえにサービスを即時に他の地域に展開することが可能です。
- 機能が豊富
他社では実装していない40以上のサービスを含む165種を超えるサービスが存在するので、
AWSを契約していれば、機械学習機能や画像認識などのAmazonが保有する様々な技術を利用することができます。
Amazon技術に乗っかれるのは便利ですね!
AWSは上述したような特徴があることから高い市場シェアを確保できていることがわかりました。
特に、他社のIaaS製品との違いである『機能の豊富さ』などが今後も維持できれば、市場シェアをキープしていくことができそうです。
アマゾン(Amazon)の業績分析と株価予想
これまでのデータを元にAmazonの今後の株価予想をしていきます。 まずは定量的な分析からです。
EPS成長率が約30%、株主資本成長率が32%となっており、Amazonの成長率が凄まじく高いのがよく分かります。
今後も今までの10年間と同程度の成長率が維持できるとの仮定のもと、将来の株価を予想していきます。
現在の成長率を維持していくと【妥当】レベルで124.7%、【保守的】レベルで23.5%の投資リターンが望める予想となっており、Amazonは投資対象として魅力的だという結果になりました。
※10月21日時点の株価:1785.66ドル PER 50倍にて算出
この予測株価におけるPBRは【妥当】レベルで5.7倍、【保守的】レベルでは4.5倍となっており、現在の20倍という数値よりはだいぶ現実的な値ですが、まだまだ高い値です。
仮にPBR1.0倍程度の株価となる場合は、投資リターンが▲70%近くになります。
結論
Amazonは魅力的な銘柄だが高すぎる
株価予測では現在の成長率を維持すれば124.7%の投資リターンを得られるとの結果が出ましたが、その際のPBRは6倍近くになり割高と言わざるを得ません。
仮に、PBR:1.0倍基準の場合は投資リターンが▲70%、少し基準を緩くしたPBR:2.0倍の場合でも▲50%程度の損失が出てしまう計算になります。
現在の株価はPBR20倍、PER80倍超なので、普通の投資対象としては高すぎるという印象です。
一方で、セグメント別の利益を見ていくと北米セグメントとAWSセグメントの利益の伸びが凄まじく、
特にAWS事業は5年で10倍の営業利益になるなどしており、 このような急成長が株価に織り込まれていると考えると、少し納得がいく株価でもあります。
したがって、この株価が『高すぎない株価』となるかどうかは
- IaaS市場でのAmazonの50%近いシェアを今後も維持できるか
- PaaS市場でMicrosoftなどの競合にどう勝っていくか
が重要なポイントになりそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 今回の分析では、残念ながら Amazonの株価は高すぎるという結論になりました。
Amazonには、オンライン小売とAWSという2つの事業がありますが、小売事業は利益率の上昇は見込めず競合も強いので「市場シェアを取れるかどうか」が業績を左右します。
一方のAWS事業は、場所に制限されずに高利益率を叩き出せる事業形態であり、IaaS市場自体も大きく成長していますので、今後Amazonで見るべきポイントは『AWS事業』であると言えると思います。
Amazonへの投資を検討する際は、AWS事業の伸びや競合と比較した市場シェアなどを調べた上で判断をしていくべきだと言えそうです。
どのような企業に投資をする際にも、今回のような分析は必須です。
今回は簡単な業績分析から株価を予測してみましたが、管理人が財務分析などの定量分析をする際は下記のような方法で行なっています。
また、今回は定性分析は行なっていませんが、定性分析をする際はこのような手法で行うことが多いです。
>> 企業の定性分析 〜定性分析の手法:3つのフレームワークで分析してみる〜
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