【株価分析】食糧が強みの総合商社『丸紅』(8002)の分析と株価予測

今回は5大商社の中でも、非財閥系である丸紅(8002)の株価分析・株価予想をしてみました。

総合商社の中では、非財閥系の丸紅(8002)と伊藤忠(8001)がジャイアント・キリング感があり好きです。

丸紅(8002)の分析まとめ

  • 5大商社のひとつで業績は比較的安定している
  • 原油市場や投資先の評価減の影響で2020年3月期は▲1,975億円と大幅な赤字
  • リスク管理状況を見る上でも業績推移は注視すべき
  • 投資対象としては割安で魅力的だが、かなり割安なタイミングで投資したい銘柄

 

他の総合商社はこちらで分析しています。

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丸紅(8002)の概要

丸紅(8002)は芙蓉グループの総合商社で、三菱・伊藤忠・三井・住友と並んで5大商社の一つとして知られています。

丸紅の特徴としては、5大総合商社の中では特に穀物・食料電力に強みを持っており、この分野では業界首位の地位を築いています。

米国の穀物会社ガビロン・グループは丸紅傘下の子会社です(2013年に3,000億円弱で買収しています)

 

丸紅(8002)の事業セグメントは以下の大分類で6グループ、小分類で14の本部に分かれています。

  • 生活産業グループ
  • 食料・アグリ・化学品グループ
  • 電力・インフラグループ
  • エネルギー・金属グループ
  • 社会産業・金融本部グループ
  • CDIO

 

それぞれの詳細は下記のようになっています。

  • 生活産業グループ

【ライフスタイル本部】【情報・不動産本部】【フォレストプロダクツ本部】が含まれる事業グループです。

衣料分野のOEM、不動産開発、植林・パルプ生産事業、バイオマス燃料事業などを担っています。

ポロシャツで有名なラコステの輸入・販売を行っているのも丸紅の生活産業グループになります。

2020年度の売上は6,848億円、利益は194億円となっています。

 

  • 食料・アグリ・化学品グループ

【食料本部】【アグリ事業本部】【化学品本部】が含まれる事業グループです。

穀物や畜産物の流通販売、農薬や種子などの農業資材の取り扱い、合成樹脂や塩ビなどの流通販売などを担っています。

ちなみに、丸紅は穀物トレーディング取扱量とコーヒートレーディングは業界No.1です。

2020年度の売上は4兆8,696億円で売上の70%近くを占めており、利益は▲535億円となっています。

 

  • 電力・インフラグループ

【電力本部】【インフラプロジェクト本部】が含まれる事業グループです。

火力発電所や風力発電事業の開発・運営、鉄道や石油プラント、パイプラインなどのインフラ関連事業に対する事業投資や総合サービスの提供を行っています。

2020年度の売上は1,860億円、利益▲188は億円となっています。

 

  • エネルギー・金属グループ

【エネルギー本部】【金属本部】が含まれる事業グループです。

石油やガスの探鉱・開発、天然ガスやLNG事業への投資・運営、鉄鉱山・炭鉱・銅山への事業投資などを行っています。

ウラン鉱山開発などの原子燃料関連サービスなども事業範囲に含まれています。

2020年度の売上は8,074億円、利益は▲1,551億円となっています。

 

  • 社会産業・金融本部グループ

【航空・船舶本部】【金融・リース事業本部】【建機・産機・モビリティ本部】が含まれる事業グループです。

航空機トレード事業やエンジン開発投資、商船・LNG船の運航から、リース事業や建機販売、自動車ディーラーまで幅広い産業分野でビジネスを行っています。

2020年度の売上は4,244億円、利益は238億円となっています。

 

  • CDIO

【次世代事業開発本部】の事業グループです。

スマートシティやAI、CVCの運営に至るまで成長領域における新ビジネスモデルの創出をミッションとしています。

2020年度の売上は0.6億円、利益は▲36億円となっています。

 

穀物・食料の丸紅と言われるだけあって『食料・アグリ・化学品グループ』の売上が4兆8,696億円とかなり大きいのが印象的です。

また、2020年度はエネルギー市況の影響を受けて『エネルギー・金属グループ』で1,551億円もの損失を計上しています。

総合商社の宿命とも言えますが、丸紅も商品市況の相場により大きく利益がブレる体質を持っていると言えそうです。

丸紅(8002)の業績推移

丸紅(8002)の過去10年間の業績は以下のようになっています。

丸紅 8002 業績推移

丸紅 8002 業績推移 グラフ

参考:丸紅 IRライブラリー 決算短信 より管理人作成

 

2020年3月期以外の9年間は業績が比較的安定して推移しています。

丸紅も多くの産業領域にビジネスを展開しており、業績のリスク分散ができていることから安定した売上が確保できていると言えそうです。

EPSの推移も比較的順調ですし、株主資本も基本的には右肩上がりに推移しています。

一方で、2020年3月期の業績悪化は ▲1,975億円と非常に大きくなっており、その赤字の原因の多くを占めるのが ▲1,551億円を計上した『エネルギー・金属グループ』▲535億円の『食料・アグリ・化学品グループ』です。

赤字原因の多くは一過性の投資損失ではあるものの業績の割にかなり大きな損失で、投資のリスク管理が十分にできているかどうか疑問に残るところです。

 

次に、セグメント別の業績推移は下記のようになっています。

丸紅 8002 セグメント別業績 セグメント別売上 グループ別売上

丸紅 8002 セグメント別業績 セグメント別売上 グループ別売上 グラフ

参考:丸紅 IRライブラリー 決算短信 より管理人作成

 

『食料』は25.8%、『アグリ事業』は38.6%と『食料・アグリ・化学品グループ』に売上の多くが偏っています。

もう一つの強みである『電力』の売上はそこまで大きな割合を占めていません。

 

もっとも、商社のビジネスは卸売業であるため売上収益の規模にはさほど意味がなく、売上収益よりも、どれだけ利益をあげたかが重要になります。

そこで、最後にセグメント別の利益推移を見ていきます

丸紅 8002 セグメント別業績 セグメント別利益 グループ別利益

参考:丸紅 IRライブラリー 決算短信 より管理人作成

 

2020年度は、2019年度と比較して全てのグループ・本部で業績が悪化しています。

特に『アグリ事業』『プラント』『金属』『エネルギー』『金融・リース事業』などは悪化の幅が非常に大きく、業績マイナスへの寄与率が高いです。

一方で、『食料』や『航空・船舶』『建築・自動車・産機』などの安定感が印象的ですね。

 

また、2019年3月期の数字を見ると収益は各グループ・本部で比較的分散されており、ビジネス領域間でのリスク分散ができているように思われます。

※業績がマイナスで円グラフが壊れてしまったので、グループ別はグラフなし

丸紅(8002)の株価分析・株価予想

まずは丸紅(8002)の過去10年間の業績推移を分析していきます。

丸紅 8002 株価分析 業績分析

平均ROEは9.4%と一般的な水準より少し高めになっており、比較的効率的に事業運営ができていそうです。

平均EPS成長率は6.55%とかなりしっかりと成長していることがわかります。

一方で、PERは計測不可能、PBRが0.64倍となっており現在の株価水準は比較的割安なように思えます。

 

心配なのは今後の経営状況ですが、営業キャッシュフローは毎年大きなプラス(2020年3月期でも +3,270億円)で推移しており投資を控えれば安定的なキャッシュ創出が見込まれること、資本力は比較的厚いことを考えると、そこまで心配は要らなさそうです。

2020年3月期は市況による特別要因でのマイナス決算だったと捉え、2011年から2019年までの過去9年間を丸紅の実力値と考えます。

今後も実力と同程度の成長が見込まれるとすると、8年後の丸紅(8002)の株価予想をしてみると下記のようになります。

丸紅 8002 株価予想 株価予測

 

現在の成長率を維持していった場合、【妥当】レベルで179.2%、【保守的】レベルで104.7%の投資リターンが望める予想となっており、丸紅(8002)は魅力的な銘柄という結果になりました。

※2020年5月15日時点の株価 465円を元に、PER10倍にて算出

この予想株価におけるPBRは【妥当】レベルで0.9倍、【保守的】レベルでは0.8倍となっており、現在の0.64倍というPBRと比べて少し高いですが、比較的割安な水準となりました。

 

丸紅(8002)は2021年3月期の業績予測を1,000億円、EPSを55.33円と予想しています。

2020年5月15日時点の株価でもPER9倍で比較的割安水準ではあるので、今後の業績にかなり注意する必要はありますが投資するのもありかと思いました。

結論

丸紅(8002)は商社の中でも割安な銘柄だが、今後の業績推移にかなり注意する必要がある

 

丸紅(8002)は食料と電力に強い総合商社で、ビジネス領域はある程度リスク分散されていることが特徴と言えそうです。

一方で、分散されているとは言えエネルギー・金属グループの利益寄与率は高く、商品市況が大きく変化した時は他の商社同様に大きなマイナスを計上することが想定されます。

他の総合商社と異なる点は、赤字計上額の割合が業績の割に非常に大きく、リスク管理が他商社ほど十分にできていないかもしれない点です。

したがって、丸紅(8002)に投資をする際は十分に割安なタイミングで投資を行い、安全マージンを確保する必要がありそうだと感じました。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

丸紅(8002)は5大商社の中でも『穀物・食料』『電力』に強い総合商社として有名です。

2019年3月期までは比較的堅調な業績推移をしていましたが、2020年3月期は▲1,975億円と大幅な投資損失を計上しています。

2021年3月期の業績予想は1,000億円となっており、現在のタイミングでも投資対象としては割安で魅力的です。

一方で、他商社と比べてリスク管理が十分でない可能性が感じられますので、投資の際は安全マージンを見込んで投資するべきだと感じました。

 

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