オフィスで最も使われているオフィス用品といえば、きっとペンかポスト・イットだと思います。
今回はタスク管理やメモに非常に便利な、みんな大好きポスト・イットを製造販売しているスリーエム(3M)の分析をしていきます。
1番小さいサイズのポスト・イットを上手く使いこなせないのは人生の悩み。
スリーエム(3M)の概要
スリーエムは世界トップクラスの化学素材・電気素材メーカーです。
産業用のテープやフィルム製品、ベアリングなどからオフィスで用いる事務用品などまで取り扱っています。
よく見かける製品としてはポスト・イットや両面テープ、絆創膏などがあるかと思いますが、特に『ポスト・イット』は使ったことがない人はいなさそうなくらい生活に浸透している商品ですよね。
かなり幅広い商品展開をしていますが、事業セグメントは下記の5つに分かれています。
- Industry
- Safety & Graphics
- Health Care
- Electronics & Energy
- Consumer
それぞれの事業内容、製品は下記の通りです。
- Industry
工業製品部門です。
工業用のテープや接着剤、研磨材などを扱っています。
- Safety & Graphics
安全製品などを扱っている部門です。
防塵マスクや滑り止めテープ、反射材などを取り扱っています。
- Health Care
医療用商品を扱うヘルスケア部門です。
病院や歯科医向けのサージカルテープや聴診器、電極などまで取り扱っています。
- Electronics & Energy
電気機器用品向けの部門です。
絶縁ビニールテープやモニター、モニター用のフィルムなどを扱っています。
- Consumer
一般消費者向けの部門です。
ポストイットなとのオフィス用品や粘着テープ、スポンジなどはこの部門で扱っています。
商品群は非常に多く、6万点近くの商品を扱っています。
また、4万点近くの特許を保持しており、製品の競争力は非常に強いと言えます。
スリーエム(3M)のカルチャー
スリーエム(3M)にもGoogleと似たような15%カルチャーがあります。
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ざっくり言うと勤務時間の15%を自分の好きなことに充てても良いというルールです。
実は『ポスト・イット』もこの15%カルチャーから生まれた商品で、全世界で大ヒットしました。
【参照:3Mジャパングループ 製品開発ストーリーより】
やはり自由に思考できる仕組みを持った企業はイノベーションを起こせる可能性が高そうですね。
次に、長年業績を拡大してきたスリーエム(3M)の業績推移を見ていきます。
スリーエム(3M)の業績推移
スリーエム(3M)の10年間の業績推移を見ていきます。
参考:3M Investor Relations SEC Filing より管理人作成
純利益が減少している年もあるものの、利益ベースの業績は比較的安定していると言えそうです。
一方で、株主資本は10年前とほとんど変わっていません。
むしろ2018年度の株主資本は2012年度の半分程度しかなく、マイナス成長している点が非常に気になります。
次に、事業別の売上を見ていきます。
参考:3M Investor Relations SEC Filing より管理人作成
イメージと異なり、ポスト・イットなどの一般消費者向け売上はそれほど大きくありません。
売上の1/3以上を占めるのは工業製品向けの商品で、自動車などの製造業と関係が深いことがわかります。
つまり、スリーエムの業績は工業製品の生産量などに左右されると言えそうです。
また、地域別の売上構成は以下のようになっています。
参考:3M Investor Relations SEC Filing より管理人作成
アジアでは売上が拡大しているものの、他地域での成長はほとんど見られません。
現在成長著しい中国や東南アジアでの売上増が、全体売上の増加に大きく寄与していると言えそうです。
スリーエム(3M)の業績分析と株価予想
まず、過去10年間の業績推移を元に分析を行っていきます。
ROEは非常に高い数値を維持してるものの、株主資本が10年間でマイナス成長しているので、全体としてはあまり評価できません。
一方で、多くの工業製品を取り扱っており、産業に必要な根幹を担っているだけに底堅いビジネスだと言えそうです。
また、60年以上に渡り増配を続けており、今後も増配する流れは強そうに思えます。
このような業績が今後も続くと仮定した上で、株価の予想をすると下記のようになります。
現在の成長率を維持していくと【妥当】レベルで4.5%、【保守的】レベルで▲21.8%の投資リターンが臨める予想となっており、
スリーエム(3M)は現時点では投資対象としてあまり魅力的ではないという結果になりました。
※1月11日時点の株価180.37ドルを元にPER 15倍にて算出
また、シェアリングエコノミーやペーパーレスなどが進んでいるため、モノ消費よりコト消費になっている現状を考えると、工業製品の生産が減少していく可能性もありそうです。
この場合、スリーエムにはマイナスインパクトが発生し、さらにリターンが下落すると思われるので、注意が必要そうです。
結論
スリーエム(3M)は長期投資先としてはあまり魅力的とは言えない安定配当銘柄
スリーエム(3M)は業績が長期に渡り安定している点や、特許を多数取得しているといった面で、優良安定銘柄と言えそうです。
また、配当金も60年間増配を続けており、配当銘柄として一見は魅力的に見えます。
しかし、現在の社会情勢は『モノ消費』から『コト消費』に移りかわっています。
例えば、
- 車や機械は購入ではなくシェアして使用する
- ポストイットでやっていたタスク管理は、クラウドツールやアプリで管理する
などのようにシェアリングやペーパーレスなどが浸透し、消費するモノが少なくなっています。
このような社会の流れは今後も加速していくと思いますので、工業製品の生産やオフィス用品の使用が減少することが予想できますので、
未来を考えるとスリーエムが成長する姿があまり想像できず、頭打ちのような気もします。
加えて、株主資本面は近年で半分近くまで減少し、資本の積み上げの面から見てもあまり魅力的とは言えません。
したがって、結論としては『長期投資先としてはあまり魅力的とは言えないが、配当目的ならあり』というところでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
スリーエム(3M)はオフィス用品など一部で景気に影響されにくい商品を扱っていることや、業績が安定していることを考えると、ディフェンシブな銘柄と言えそうです。
加えて、配当は60年間増配を続けているためずっとホールドし続けて、配当銘柄として配当金を狙いにいくというのはありかもしれません。
まるで国債のようですね。
一方で、増配しなくなった場合や、現在のシェアリングエコノミーなどが進展すると売上は下落すると考えられ、株価へのマイナスインパクトは大きそうと予想できるので、業績や配当性向は常に注視する必要がありそうです。
どのような企業に投資をする際にも、今回のような分析は必須です。
今回は簡単な業績分析から株価を予測してみましたが、管理人が財務分析などの定量分析をする際は下記のような方法で行なっています。
また、今回は定性分析は行なっていませんが、定性分析をする際はこのような手法で行うことが多いです。
>> 企業の定性分析 〜定性分析の手法:3つのフレームワークで分析してみる〜
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