今回は『iシェアーズ』シリーズ(ETF)で有名な世界最大の資産運用会社であるBlackRock, Inc.(ブラックロック)【BLK】の分析をしていきます。
ブラックロック(BLK)とブラックストーン・グループ(BX)は間違えやすいですよね。
BlackRock, Inc.(BLK)の分析まとめ
- 1988年創業30年余りで世界最大の独立系資産運用会社に
- 運用額は7.43兆ドル(2019年12月時点)で世界GDP(84.9兆ドル)の9%弱にもなる
- ETF運用はBLK・バンガード・ステートストリートの3強で敵なし
- 業績も配当も魅力的でリターンが見込めそうな銘柄
- 機関投資家の運用資金次第で業績が決まるため、景気に敏感
- ETFの手数料が減少傾向にあることが不安材料
それでは詳しく分析していきます。
ブラックロック(BLK)の概要
ブラックロック(BLK)は1988年に創業された資産運用会社大手で、30カ国に拠点を持ち、全世界で機関投資家と個人投資家に対して投資助言やETF運用などのサービスを展開しています。
運用額は世界GDPの8.8%にも匹敵する7.43兆ドルを誇っており、その運用額の大きさからETFを通じて様々な企業の主要株主になっています。
米国会社四季報などを見ているとバンガードやブラックロック、ステートストリートが主要株主になっている企業の多さに驚かされます。
ブラックロック(BLK)の事業セグメントは以下の1つだけです。
- Asset Management Business
資産運用に関わるビジネス全般を提供しており、債券や不動産などの様々な資産を運用、ファンドの運営やアドバイザリーなどを行なっています。
2019年度12月期の売上は145.4億ドル、営業利益は55.5億ドルとなっています。
より詳細な分析をしていくため、まずはブラックロック(BLK)の過去の業績推移を見ていきましょう。
ブラックロック(BLK)の業績推移
ブラックロック(BLK)の過去10年間の業績は以下のようになっています。
参考:BlackRock, Inc. Financials SEC Filingsより管理人作成
業績は基本的に右肩あがりに推移しています。
特にリーマン・ショック後のここ10年はパッシブ運用への資金流入が大きかったこともあり、利益も2倍以上に成長しています。
業界最大手ということもあり、安定した業績確保ができていると言えそうです。
次に、キャッシュフローの推移を見ていきます。
参考:BlackRock, Inc. Financials SEC Filingsより管理人作成
営業キャッシュフローは安定している一方で、投資キャッシュフローは比較的少額になっています。
投資が少ないにも関わらず、安定してキャッシュを稼げていることがわかり、業界におけるブランドの強さやビジネスの力強さがわかります。
財務キャッシュフローの多くは配当と自社株買になっており、配当も増加傾向にあるので、財務CFはそこまで気にする必要はなさそうです。
運用業界は機関投資家を対象とした業界であり、業界順位は大きく変動することはないと思われるので、今後もかなり安定したキャッシュフロー確保が見込めそうです。
最後に、地域別の売上高は下記のようになっています。
参考:BlackRock, Inc. Financials SEC Filingsより管理人作成
想像通りではありますが、アメリカやヨーロッパの占める売上割合が非常に大きく、全体の95%を占めています。
米国や欧州の金融市場は非常に発展しており資金も集まりやすいと考えられますので、今後もこの地域傾向は変わらずに推移していくと思われます。
米国や欧州地域への金融規制などが入らない限り、地域別の売上等はそこまで気にする必要はなさそうです。
これまでの情報を元に株価・銘柄分析を行っていきます。
ブラックロック(BLK)の株価分析・株価予想
まずはブラックロック(BLK)の過去10年間の業績推移をもとに分析していきます。
平均EPS成長率も11.6%とかなりの成長率を達成しているのが印象的です。
ここ10年のパッシブ運用全盛の波に上手く乗って業績を拡大できたため、これだけの成長を達成できたと推測できます。
また、平均ROEは11.2%となっていますが、こちらは一般的な値と言えそうです。
PERは18.8倍と若干高めの水準になっていますが、高い成長率を考えるとそこまで割高な水準ではなさそうです。
ブラックロック(BLK)は世界最大の運用会社として、機関投資家・個人投資家に様々なサービスを提供してきました。
「iシェアーズ」を始め、ブラックロックが30年の間に世界中で築き上げたブランドや信用は比類がないものに思われます。
築き上げたブランドや信用ゆえに、現在の運用額は全世界のGDPの9%弱の7兆ドル超にも及んでおり、パッシブ運用全盛の波にド真中で乗った結果とは言え、凄まじい運用額を誇っています。
これらブラックロック(BLK)の強みである業界シェアやブランドはそう簡単に衰退するものではないと思われます。
仮に今後も過去10年間と同程度の成長をしていくとした場合、8年後の株価と投資リターンは以下のようになります。
現在の成長率を維持していった場合、【妥当】レベルで73.5%、【保守的】レベルで42.6%の投資リターンが望める予想となっており、ブラックロック(BLK)は投資対象としてある程度魅力的という結果になりました。
※2020年6月26日時点の株価 534.85ドル を元に、PER10倍にて算出
PERは10倍とかなり保守的な水準で予想株価を算出していますが、PER12倍では62〜97%、PER15倍では92〜131%となり、標準的な水準で推測するとかなり魅力的な銘柄になります。
一方、近年ETFなどの手数料率が低下していく流れが加速しています。
手数料がゼロになる等の劇的な変化は起こりにくいかとは思いますが、今後のブラックロック(BLK)の収益性が低下するのは必至と考えられます。
ブラックロック(BLK)への投資を考える際は、ある程度保守的な業績予想を覚悟した上で意思決定をしていくべきと言えるでしょう。
結論
ブラックロック(BLK)は魅力的な銘柄だが、投資は割安水準で
ブラックロック(BLK)は世界最大の資産運用会社として世界各地に拠点を持ち幅広くビジネスを展開してきています。
ブランドや市場シェアは非常に強く、今後も安定した利益創出やキャッシュ確保が見込めると考えられます。
EPS成長率も11.6%と高い成長率を誇っているのも魅力的です。
現在のブラックロック(BLK)に投資した場合、過去10年と同じように成長をしていくと、8年後に42.6%〜73.5%のリターンが見込めるという予想になりました。
一方で、金融市場の収縮やETFの手数料率の低下がリスクとして挙げられます。
現在はコロナ等を影響に世界経済が停滞期に入っており、機関投資家の資金の引き揚げはブラックロック(BLK)の業績に大きな影響を与えると考えられます。
加えて、運用手数料の引き下げの流れが世界中で起きており、こちらもブラックロック(BLK)にとっては懸念材料です。
ブラックロック(BLK)はビジネスや稼ぐ力は非常に魅力的ではあるものの、上記で挙げたリスクなどを踏まえ、割安な水準で投資を考えたい銘柄と言えそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ブラックロック(BLK)は世界最大の資産運用会社として安定した業績推移を確保してきました。
30年間積み上げてきたブランドや近年10年間では11%を超える高い成長率などを保持しており、投資対象として魅力的な企業と考えられ、8年間の投資で73.5%の投資リターンが望めるという予想になりました。
一方で、金融市場の収縮や運用手数料の低下傾向などのイベントがリスクとして挙げられ、その場合はブラックロック(BLK)の収益基盤自体が多少なりとも揺らぐと考えられますので、特に市場収縮などにはかなり注意して投資決定をした方が良さそうです。
どのような企業に投資をする際にも、今回のような分析は必須です。
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