今回は世界有数の信用格付けサービスを提供するS&P Global(スタンダード・アンド・プアーズ)の分析をしていきます。
マネーショート(映画)でスタンダード・アンド・プアーズの存在を知った人も多いのではないでしょうか。
S&P グローバル(SPGI)の分析まとめ
- 世界有数の格付け機関として有名
- 圧倒的なブランド力から生まれる安定した業績が魅力的
- M&AによるAIなどの新領域への進出も期待できる
- 成長率は非常に高いが株価水準も高い
- 業績も配当も魅力的で、リターンが見込めそうな長期安定銘柄
それでは詳しく分析していきます。
S&P グローバル(SPGI)の概要
S&P グローバル(SPGI)は1917年に創業された金融情報サービス大手です。
債券格付けや金融取引情報、S&P500などの指数の提供を行っています。
S&Pグローバルは2016年までマグロウヒルという社名で元々は出版社でしたが、1966年にスタンダード&プアーズを買収して以降、金融サービス業を中心としたサービスを提供しています。
ビジネスウィーク誌を出版していたことでも有名です。(2009年にブルームバーグに売却)
S&P グローバル(SPGI)の事業セグメントは以下の4つに分かれています。
- Ratings
- Market Intelligence
- Platts
- Indices
それぞれの事業セグメントの詳細は以下のようになっています。
- Ratings
世界三大格付け機関として有名な格付け部門です。
企業や債券の信用格付け・分析等を行い市場参加者に対して情報やベンチマークを提供している事業セグメントです。
2019年度12月期の売上は31.1億ドルで全体の45.5%、営業利益は17.6億ドルで全体の51.3%を占めています。
- Market Intelligence
業界ごとの分析レポートや様々な企業の財務情報データなどの様々な定量・定性データサービスである『Market Intelligence』等を展開している事業セグメントです。
2019年度12月期の売上は19.6億ドルで全体の28.7%、営業利益は6.1億ドルで全体の17.7%を占めています。
- Platts
コモディティやエネルギー市場における市況情報やベンチマークを提供している事業セグメントです。
2019年度12月期の売上は8.4億ドルで全体の12.4%、営業利益は4.4億ドルで全体の12.7%を占めています。
- Indices
世界的なインデックスであるS&P500などの株価指数を算出している事業セグメントです。
2019年度12月期の売上は9.2億ドルで全体の13.4%、営業利益は6.3億ドルで全体の18.3%を占めています。
大きく『格付けサービス』『情報提供サービス』『指数提供サービス』に分かれていますが、格付けの構成比が売上の半分以上を占めており、S&P=格付けという一般的なイメージを裏切らない部門構成になっています。
投資銀行ほど景気には左右されなさそうですが、金融市場が盛り上がっている時の方が格付けされる商品も多くなりそうです。
より詳細な分析をしていくため、まずはS&P グローバル(SPGI)の過去の業績推移を見ていきましょう。
S&P グローバル(SPGI)の業績推移
S&P グローバル(SPGI)の過去10年間の業績は以下のようになっています。
参考:S&P Global Inc. Investor SEC Filings & Reportsより管理人作成
業績は基本的に右肩あがりに推移しています。
2014年度は大きく減益してるように見えますが、これは事業売却の影響による一時的な減益で、そこまで気にするようなものではありません。
リーマン・ショック時の業績も業績はさほど落ちておらず、安定した業績確保ができていると言えそうです。
次に、事業セグメント別の売上高は下記のようになっています。
参考:S&P Global Inc. Investor SEC Filings & Reportsより管理人作成
世界三大格付け機関として有名なS&Pグローバル(SPGI)ですが、『Ratings』の売上は意外にも半分以下にとどまっています。
業績推移を見ても『Ratings』部門は安定しており、信用に傷をつけない限り今後も安定した業績を見込めそうです。
また、『Market Intelligence』部門の売上は30%弱となっていますが、ここ3年間で売上が1.2倍程度に成長しているのが印象的です。
最後に、事業セグメント別の利益は以下のようになっています。
参考:S&P Global Inc. Investor SEC Filings & Reportsより管理人作成
『Rating』が52%と半分以上を占めており、安定収益の柱となっています。
その他では『Market Intelligence』が17%、『Platts』が28%、『Indices』が18%とバランスが良い事業ポートフォリオとなっています。
ただし、すべての事業が経済動向や景気に左右されやすく、リスク分散ができているというわけではなさそうです。
とはいえ、絶大なブランドを持つ『Rating』部門が安定収益の柱となり、他の部門が分散して収益を確保できているので、事業構造は比較的強いと思われます。
これまでの情報を元に株価・銘柄分析を行っていきます。
S&P グローバル(SPGI)の株価分析・株価予想
まずはS&P グローバル(SPGI)の過去10年間の業績推移をもとに分析していきます。
平均ROEは195.1%となっており非常に特異な企業に見えますが、これは自己資本をかなり低くコントロールしているからで、そこまで重視すべきではなさそうです。
とは言え、税引後純利益率は30%前後あるので、付加価値の高いサービス提供ができている企業であるのは間違いありません。
平均EPS成長率も18.8%とかなりの成長率を達成しているのも印象的です。
PERは38倍と高めの水準になっており、S&P グローバル(SPGI)が高い成長率を期待されているのがわかります。
S&P グローバル(SPGI)は歴史ある格付け機関として有名です。
鉄道会社の情報提供や債券格付けから始まった同社ですが、これまでに格付けサービスや市場情報サービスで築き上げた信用とブランドは相当なものと思われます。
この信用力やブランドが同社の安定した業績を支える競争力の源泉と言えそうです。
また、S&P グローバル(SPGI)は2018年に『Kensho Technologies Inc.』、2020年には『RobecoSAM』の買収などを行っており、ESGレーティングや人工知能を用いた分析などの新しい領域への投資も積極的に行っています。
現在までの分析に加えて新しい分析手法や新領域の分析などでサービスに厚みを増していき、金融情報サービス機関としてさらに成長していく意志が感じられます。
上記で挙げたS&Pグローバル(SPGI)の強みである信用力=ブランド力はそう簡単に衰退するものではないと思われます。
加えて、今後の新しい取り組み(人工知能による分析やESGのレーティングなど)は時代の流れに沿ったもので、成長も見込めそうです。
今後も過去10年間と同程度の成長をしていくと仮定した場合、8年後の株価と投資リターンは以下のようになります。
現在の成長率を維持していった場合、【妥当】レベルで97.0%、【保守的】レベルで55.4%%の投資リターンが望める予想となっており、S&P グローバル(SPGI)は投資対象として魅力的という結果になりました。
※2020年6月18日時点の株価 326.81ドル を元に、PER20倍にて算出
BPSが算出できなかったため、この予想株価におけるPBRは予想できませんでした。
結論
S&Pグローバル(SPGI)はかなり魅力的な安定銘柄
S&P グローバル(SPGI)は世界三大格付け機関として金融情報サービスを展開しています。
市況情報や分析サービス、株価指数の算出などで培ってきたブランド力は強く、今後も比較的安定した利益創出が見込めると考えられます。
EPS成長率も18.8%と高い成長率を誇っている上に、新領域への投資も行っているため今後の成長にも期待できそうです。
一方で、自己資本比率が非常に低く、その結果かなり突出したROE(100%超)となっていますが、こちらはあまり参考にはなりません。
現在のS&P グローバル(SPGI)に投資した場合、過去10年と同じように成長をしていくと、8年後に55.4%〜97.0%のリターンが見込めるという予想になりました。
S&P グローバル(SPGI)は安定して増配してきた銘柄でもあり『非常に安定した収益基盤を持つ成長増配会社』として非常に魅力的と言えそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
S&P グローバル(SPGI)は金融情報サービス機関として、歴史と信用から生まれる圧倒的なブランド力を持っており、その結果安定した業績を確保できている銘柄ということがわかりました。
EPS成長率は申し分なく、積極的に新規事業への投資を行っていることもポジティブな印象です。
今後も信用あるブランドであるとすれば、安定した業績の成長増配会社と考えられ非常に魅力的な銘柄と言えそうです。
一方で、サブプライムショック時に債券格付けにより訴訟を起こされたこともあり、信用毀損の際はブランド価値が低下すると思われるのでかなり注意した方が良さそうです。
どのような企業に投資をする際にも、今回のような分析は必須です。
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