M&Aアドバイザリーといえば、ゴールドマン・サックスやJPモルガンなどの外資系投資銀行の業界というイメージがありますよね。
そんな外資系にも負けない日本発のグローバルM&Aアドバイザリー企業がGCA株式会社です。
今回はGCA株式会社(2174)の分析と株価予測をしてみました。
GCAの概要
GCA株式会社は独立系のM&Aアドバイザリーファームです。
2004年に創業した比較的新しい会社ですが、その後2008年にSavvian LLC、2016年にAltiumと経営統合を果たしています。
そのため商号が GCA → GCAホールディングス → GCAサヴィアングループ → GCAサヴィアン → GCA とかなりの回数に渡って変更されてきました。
GCAが扱った案件としてよく知られているのは、ワールドのMBOや阪急ホールディングスと阪神電気鉄道株式会社の経営統合、JTの飲料事業部門のサントリーへの売却など、かなりの大型案件です。
GCAのサービスは大きく4つに分かれています。
- M&Aアドバイザリー
- 戦略コンサルティング・PMIコンサルティング
- デューデリジェンス
- アセットマネジメント
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M&Aアドバリザリー
買収や売却、グループ再編、事業再生などの企業の戦略的な動きをアドバリザリーとしてサポートする業務です。
全世界にオフィスをもつGCAは海外企業同士のM&Aアドバリザリーを多く手掛けており、収益の3分の2が海外M&Aアドバリザリーサービスから生まれているようです。
上場、非上場に関係なくサービスを提供していますが、国内での主要クライアントは大手上場企業になっています。
近年はクロスボーダーM&Aも多くなっているので、こちらの伸びも楽しみです。
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戦略コンサルティング・PMIコンサルティング
戦略コンサルティングでは、非連続的な成長を目指すためのM&A戦略を中心としたコンサルティング業務を行い、
PMIコンサルティングでは、M&A後のシナジー創出に向けて、統合計画作成からシステムや人事の統合まで含めた統合プログラム運営までをサポートするコンサルティング業務を行なっています。
M&Aの前後のサービスを提供しているということですね。
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デューデリジェンス
M&Aによる買収対象企業の調査全般を財務や税務、ビジネスの観点から行うサービスです。
デューデリジェンスを行うことで、買収先企業の適合性やのれんの減損リスクを把握することができます。
M&Aにおいて絶対に外せないデューデリジェンスですが、かなりの専門性を求められる業務です。
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アセットマネジメント
M&AやMBO時は多額の資金が必要になりますが、プライベートエクイティやメザニンファイナンスなどによって、買収資金の調達支援をするサービスです。
特にメザニンファイナンス業務はMCo株式会社というグループ会社でサポートを行っているようです。
※ 参照:概要はGCA 業務内容を参照に作成
つまり、GCAではM&A案件の創出からM&A後の統合(PMI)まで一気通貫でサービスを提供しているということになります。
コンサルティングやデューデリジェンスなどのプロフェッショナルな仕事が多く、その分平均給与も非常に高く2018年の平均年収は2,063万円となっています。
※ GCA 2018年有価証券報告書より
次に、GCAの業績推移と分析を行なっていきます。
GCAの業績推移と企業分析
GCAの10年間の業績推移を見ていきます。
参考:GCA 決算短信より管理人作成 ※2018年度から会計基準が変更
基本的に良い決算を組んで右肩あがりに成長していますが、数年に一度、かなりの減益決算を組んでいます。
次に事業をセグメント別で見ていきます。
参考:GCA 決算短信より管理人作成
M&Aアドバイザリーの売上貢献がかなり大きいのがよくわかります。
M&Aという商品の特性上、売上計上の時期がズレたり、世界情勢によって案件数が大きく増減すると考えられるため、このような結果になっていると推測できます。
マーケットの崩落も近いかもですし、その場合はGCAの業績にも大きくマイナス影響が出そうです。
GCAの株価分析と株価予想
今までの株価分析や戦略分析からGCAの今後の株価予想をしていきます。
まずは業績推移から定量的な分析を行なっていきます。
平均ROEは8%以上になっており、平均値に近いですが、これは数年に一度ある減益が影響している結果と言えます。
ROEが10%超の決算期も多くあるので、ROEが平均的なのは楽観的に捉えても良いかもしれません。
減益が影響した結果、株主資本成長率は5%以下となっており、高成長企業とは言えなさそうです。。
今後も今までの10年間と同程度の成長率が維持できるとの仮定のもと、将来の株価を予想していくと下記のようになります。
現在の成長率を維持していくと【妥当】レベルで23.6%、【保守的】レベルで▲3.4%の投資リターンが望める予想となっており、
残念ながら、GCAは現時点では投資対象としてそこまで魅力的とは言えないという結果になりました。
※11月1日時点の株価879円を元にPER 14倍にて算出
この予測株価におけるPBRは【妥当】レベルで1.2倍、【保守的】レベルでは1.0倍となっており、現在の1.59倍という数値よりは、清算価格に近い現実的な値となっています。
一方で、M&AというROEが高くなりそうなサービスを提供していることを考えると、現在のPERの14倍、PBRが1.59倍という数値は少し違和感があります。
試しに他のM&A銘柄とのPER、PBRを比較をしてみると下記のようになりました。
ROEが比較的低いという点はあるものの、明らかにGCAだけ指標が低いのがよく分かります。
仮に、PERを現行より少し高めの20倍とすると、投資リターンは【妥当】レベルで61.9%、【保守的】レベルで26.3%まで上昇します。
この時のPBRは1.7倍となり、比較的高めではあるものの他社程ではありません。
適正なPERはもちろんわかりませんが、指標的には他社と比べて比較的割安なのかもしれません。
結論
GCAは保有を考えたい面白い銘柄
GCAはM&A市場で川上から川下までサービスを提供していますが、1件あたりのディール規模が大きく、クロスボーダー案件が多くあることが同業他社との違いと言えます。
それゆえ、GCAは大手企業がM&Aに消極的な不景気時には案件数が減少し、結果としてGCA自体の業績も景気に左右されやすいという特徴を持っていそうです。
一方、別の側面として、GCAは株主還元100%ポリシーを持っており、
つまり、全世界でM&Aの案件数は増加傾向にあり、GCAは基本的には右肩上がりの市場でビジネスを行えていますが、
マーケットが下落した際には、M&Aサービスの売上が落ち込み、結果としてGCAの株価も大きく下落すると考えられます。
その際に割安に仕込むことができれば、100%株主還元と景気回復時の大幅な株価上昇が実現できるような面白い銘柄かもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
外資系投資銀行が幅をきかせるM&A業界で、日本発独立系として異彩を放つGCA株式会社ですが、業績は可もなく不可もなくといった状態です。
一方で、指標的には割安であること、株主還元100%と宣言していること、今後M&A業界は成長が見込まれることなどを考えると、非常に面白そうな銘柄でもあります。
加えて、GCAはイスラエルやシリコンバレー等にも支店があり、これから急成長するITベンチャーとも関係性を持っていそうと推測できます。
大手企業がITベンチャーを買収する案件もかなり増えてきているので、こちらも楽しみですね!
どのような企業に投資をする際にも、今回のような分析は必須です。
今回は簡単な業績分析から株価を予測してみましたが、管理人が財務分析などの定量分析をする際は下記のような方法で行なっています。
また、今回は定性分析は行なっていませんが、定性分析をする際はこのような手法で行うことが多いです。
>> 企業の定性分析 〜定性分析の手法:3つのフレームワークで分析してみる〜
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