適切な利益確定と損切のタイミングとは?【理論上の最適な売り方】

投資をしていて“いつ売るべきか?”は誰しもが迷う事だと思います。

よく“損切をする”基準と”利益確定をする”基準を持つことが大事だと言われています。

例えば10%の利益が出たら利益確定で売る、逆に10%の損失が出たら損切として売る、といった風に保有する銘柄が一定の水準に達した時に売る、買うを選択するといったものです。

さて、ここでひとつ疑問があります。次のうち、どの損切・利益確定が理論上良いと思われるでしょうか?

これには様々な答えがあり、唯一の正解は無いと思います。

ですが、色々と前提を置いて理論上の一つの解を考えてみたのでここで紹介します。



ー正規分布で株価変動を予測してみるー

確率論の考え方ではよく正規分布という分布に基づいた考え方がされます。
ざっくり言うと、正規分布とは自然に発生するものの確立を表す分布です。


*横軸が価格変動、縦軸が確率

これを用いて、一年後の株価の動きが正規分布にしたがって起こると仮定してシミュレーションしてみます。

損切は早めに、利益は大きく??

イメージ的には”損切は早めに、利益は大きく”という戦略をとる方も多いのではないでしょうか?

この様な戦略をとった場合、正規分布に従うとどの様になるのかを
仮に1000回投資した場合のおよその回数と損益を考えてみます。

*オレンジー利益確定or損切をする場合、青は売却しない場合

【+10%を利益確定ライン、ー5%を損切ラインとした場合】

<条件>
・平均100円、標準偏差10の分布に従うと想定
・110円を超えたら利益確定、95円を下回ったら損切り

この場合、利益確定(+10円)はおよそ159回、損切はおよそ309回(ー5円)となります。
通算をすると
+10円 × 159 + −5 × -309 = +45円

となり、若干のプラスとなります。

【+20%を利益確定ライン、ー10%を損切ラインとした場合】

続けて別のパターンの数字でも考えてみます。

<条件>
・平均100円、標準偏差10の分布に従うと想定
・120円を超えたら利益確定、90円を下回ったら損切り

この場合、利益確定(+20円)はおよそ23回、損切はおよそ159回(ー5円)となります。
通算をすると
+20円 × 23 + −5 × -159 = ー335円

となり、この場合は大きくマイナスになる様に見えます。

結局、一律な答えはないのでしょうか?



実は含み損益を考えると一律な答えが出る?

しかし、忘れてはならないのは含み損益です。

+20%を利益確定ライン、ー10%を損切ラインとした場合、
最終的に20%〜–10%内に収まる場合も無視できないほどに十分あります

先ほどの1000回の例で言えば、損切でも利益確定でもない残りの818回は含み損益となります。(下記青枠)

この部分の損益を考慮した上で最終的な損益となります。

特にグラフのピンクの部分に注目してください

この戦略でプラスとマイナスが異なるのはこの部分のみです

左側の80〜90円帯(M)は損切りしていますが、同程度で起こるであろう右側110~120円帯(P)は売却せず保有しています。

つまり、Mの部分は-10%で抑えられていますが、Pの部分は20パーセントまでは利益確定しないので、そのまま利益がでます。

実際に1000回投資した際は、10%〜20%に収まる回数は136回あり、トータルでは+537円となります。

もう少し具体的に細かく説明すると、1000回の投資をした場合15%〜16%程度の利益が出るのが12回で、損切りをしない場合に15%〜16%程度の利益が出るのも同じく12回です。
しかし、損切りをすることで損失の方は10%に抑えられているので、この12回分は5〜6%ほどプラスになります。

このプラスを期待収益率に直すと
 537 ➗ (1000×100) = 0.537% となります。

損切り、利益確定の水準を変えれば上記の数値はもちろん変わりますが
利益確定のレンジを損切りよリモ大きく取ればこの理論上は収益率はプラスになります。

損切りを甘くするとどうなるか?

では逆に利益確定ラインよりも損切ラインを甘くしたらどうなるでしょうか?

想像するに容易いと思いますが、先ほどと真逆のパターンになります。

10%を利益確定ライン、20%を損切ラインとした場合、
1000回の100投資トータルで−537円、期待収益率ー0.537%となります。

ちなみに説明するまでもないとは思いますが、利益確定ラインと損切ラインが同じの場合は期待値の収益率0%です。



結論:利益確定ラインと損切ラインはどうすべきか?

このことから何が言えるかというと、
株価の動きが完全にランダムであるとすれば、
利益確定ラインは大きく、損切ラインは厳しめに設定する方が期待値的には良い
という結果になりました。

そしてこの結果でおそらく重要なのは、
損切の回数は利益確定よりも多く、プラスを生み出すのは含み損益であると言う事です。

損切ラインを厳しめに設定していると短期的には損切ばかりしていて損ばかりしているような気分になってしまうと思います。しかし、その投資方法が長期的には+を目指すことが出来るのです。

実際にはこれに対して取引手数料がかかるので、単純にこの戦略を実践するだけではなかなか勝ちづらいとも思いますが、、、

応用:では上がりそうな株を買うときはどうすべきか?

ここまでは株価変動が完全にランダムだった時でした。

しかし多くの方は実際に投資する場合、完全にランダムで運任せでの投資というよりは”この株は上がりそうだ”と思って投資をするのではないでしょうか。

つまり、今100円の株が1年後には110円になるであろう投資をする場合の損切り水準はどう設定すべきか?と言う点です。

もちろん、経済状況や業績を踏まえた上での投資をされるとは思いますが、その考えが正しくなかった場合は結局は運任せの投資と同じことです。

なので、「自分の考え通りならよし、例えその投資が運任せであっても勝てる戦略ならなおよし」というような2段構えで、運任せでも期待値で勝てる損切ラインを設定するのが得策なのではないでしょうか。

例えば

1年後に+5%の利益を狙う投資であれば、

損切りラインを90%(-10%)
利益確定ラインを+120%(+20%)

と設定して投資するのが良いのかもしれません。

*あくまで数学的な理論上の話なので、投資は自己責任で、参考程度にしていただければ幸いです。

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