今回は Cisco Systems, Inc. (シスコ)の分析をしていきます。
ビジネスマンなら誰もが一度は聞いたことのある超有名企業ではないでしょうか?
ちなみに社名の『シスコ』の由来ですが、創業者はスタンフォード大学(サンフランシスコの近く)出身なので、『シスコ』という社名になったらしいです。
社名って調べると色々あって面白いですよね。
シスコ(Cisco)の概要
Cisco Systems, Inc. はアメリカのカリフォルニア州に本社を置く世界的なコンピューターネットワーク企業です。
通信会社やその他一般企業に対して、ルータやWiFi、テレビ会議システム(webex meeting)IP電話(webex calling)などを提供しています。
ネットワーキング企業としては世界最大手で、市場シェアも非常に高く、日本国内ではネットワーク機器の半数近いシェアを獲得しています。
もちろん、世界的なシェアも非常に高いです。
Ciscoの事業は下記の5つのセグメントに分かれています。
- Infrastructure Platform
- Applications
- Security
- Other Products
- Service
下記が詳細になります。
- Infrastructure Platform
ルータやスイッチ、ワイヤレスネットワーク、データセンターなどの主力製品が含まれているセグメントです。
Ciscoの中では圧倒的な売上規模を誇るにも関わらず、2019年度も2018年度に比べて売上が7%アップしています。
- Applications
テレプレゼンスなどのコミュニケーションツール、IoTなどを取り扱っているセグメントです。
2019年度は2018年度に比べて売上が15%アップしています。
- Security
webセキュリティ製品やセキュリティリスクマネジメントなどを提供しているセグメントです。
2019年度は2018年度に比べて売上が15%アップしています。
- Other Products
2019年度は2018年度に比べて売上が72%ダウンしていますが、主にSPVSS事業(サービスプロバイダー ビデオソフトウェアソリューション事業)をペラミラ社に売却したことが要因です。
- Service
ソフトウェアのサポートやソリューションを提供しているセグメントです。
2019年度は2018年度に比べて売上が2%アップしています。
イメージ通りですが、ネットワーク周辺機器分野ではかなり強みを持っていると言えそうです。
最近はセキュリティ関連サービスやデータセンター周りに注力しているようです。
データセンターやセキュリティは最も盛り上がっている分野の1つだと思いますので、こちらも楽しみです。
分析と株価予測のために、まずはシスコ(Cisco)の業績推移を見ていきます。
シスコ(Cisco)の業績推移
シスコの過去10年間の業績推移は以下のようになっています。
参考:Cisco Systems, Inc. Investor Relations SEC Filings より管理人作成
右肩上がりとは少し言いづらいですが、安定して着実に業績が伸びているのがよくわかります。
一方、気になるには株主資本の部分で、2019年は2017年度の60%程度まで低下しています。
他の米国企業も業績は絶好調なのに株主資本は減少させている企業もありますので、シスコも他の米国企業と同様に株主資本にあまり重きを置かなくなっている?のかもしれませんね。
次にセグメント別の業績を見ていきます。
参考:Cisco Systems, Inc. Investor Relations SEC Filings より管理人作成
セグメント別ではネットワーク機器の売上が圧倒的なシェアを占めています。
3年間で10%程売上が伸びており、安定的な業績を確保できているセグメントです。
一方で、ApplicationsとSecurityセグメントは3年間の伸び率は非常に高くなっています。
モノ消費からコト消費の需要が大きくなっているとは思いますので、今後は
- Applicationsセグメントのなどの売り切りではないサービス
- 注目度が高いセキュリティ事業
- データセンター事業など継続的な顧客が見込まれるサービス
に注目していきたいですね。
最後に地域別の売上推移を見ていきます。
参考:Cisco Systems, Inc. Investor Relations SEC Filings より管理人作成
地域別で見ると、全地域でジワジワと伸びているのがわかります。
シェアが高く売上が伸ばしにくい状況であっても、このような結果になっているのはシスコの地力が強いからこそだと言えそうです。
シスコ(Cisco)の分析と株価予想
過去10年間の業績推移を元に分析を行ってみます。
平均ROEは15.8%と高い水準をキープしていること、平均EPS成長率も9.11%と高水準です。
一方で、株主資本成長率は非常に低く、PBRが非常に高くなってしまっています。
先程分析したように、ネットワーク周辺機器で圧倒的な売上を長期間に渡って継続的に維持できていますので、シスコの圧倒的なブランド力とシェアは今後も維持または向上できるように思われます。
したがって、シスコの現在までの成長率はある程度維持できると考えても良さそうです。
この前提をもとに、8年後の株価予想をしてみると以下のようになります。
現在の成長率を維持していくと【妥当】レベルで11.2%、【保守的】レベルで▲19.0%の投資リターンが望める予想となっており、
シスコ(Cisco)は投資対象として魅力的ではないという結果になりました。
※2020年2月4日時点の株価 47.62ドル を元に PER 15倍 にて算出
この予測株価におけるPBRは【妥当】レベルで2.4倍、【保守的】レベルでは1.9倍となっており、現在の約6.03倍というPBRと比較しても低めの水準になっており、ある程度の適正水準と言えそうです。
株主資本をベースに予想株価を計算してみましたが、シスコが株主資本を重視していない可能性もあるので、EPSベースでの予想株価も算出していきます。
シスコ(Cisco)の分析と株価予測 Ver. 2
上記の株価予測は、株主資本を元に平均ROEから利益を算出し、株価を予測しています。
しかし、シスコ(Cisco)は、直近で自己資本比率を低下させるなど株主資本に重きを置いていない可能性がありますので、この株価予想Ver. 2 では利益成長率ベースから株価予測をしていきます。
現在までの平均EPS成長率より、8年後のEPSを算出し、この時の株価をPER 15倍で算出すると下記のようになります。
この場合、現在の成長率を維持していくと【妥当】レベルで84.6%、【保守的】レベルで34.1%の投資リターンが望める予想となっており、
シスコ(Cisco)は投資対象としてある程度魅力的という結果になりました。
※2020年2月4日時点の株価 47.62ドル を元に PER 15倍 にて算出
だいぶ結果が変わりますね!
結論
シスコ(Cisco)は安定的で魅力的な株だが、株主資本の動きに注意
シスコ(Cisco)は、ネットワーク機器における圧倒的なブランド力を活かして安定した売上を確保しつつ、次のビジネスを拡大していくためにアプリケーション事業やデータセンター事業に積極的に取り組んでいます。
現在注力している事業の伸びもよく、業績の安定と成長がバランスよく混在する楽しみな会社と言えそうです。
一方で、上記の株価予測の通り、
- 株主資本ベースで算出した場合の予想株価
- EPSベースで算出した場合の予想株価
に大きな乖離が出ました。
理由としては、シスコ(Cisco)が株主資本に重きを置いているかどうか不明だからというのが大きな理由で、株主資本政策に関しては注視する必要がありそうです。
つまり、シスコ(Cisco)はビジネスには魅力があり安定的な投資先として考えられる可能性もあるが、株主資本の動きに注意する必要がある銘柄と言えそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はシスコ(Cisco)の分析と株価予測をしてみましたが、EPSベースでの予想株価とBPSベースでの予想株価に大きな乖離があり、株主資本の推移に注意する必要があるという結果になりました。
シスコ(Cisco)の魅力としては、圧倒的な知名度とシェアを誇る安定企業で、さらなる成長のために新規事業も拡大していることが挙げられます。
ビジネスモデルやブランド力はかなり魅力的だと思いますので、株主資本の推移や決算書からシスコの方針を見極めた上で投資ができれば、かなりいい投資ができそうですね。
どのような企業に投資をする際にも、今回のような分析は必須です。
今回は簡単な業績分析から株価を予測してみましたが、管理人が財務分析などの定量分析をする際は下記のような方法で行なっています。
また、今回は定性分析は行っていませんが、定性分析をする際はこのような手法で行うことが多いです。
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