成長性の分析
どんな投資家でも、どの企業が大きくなって株価上昇を果たすかを見極めようとします。
安定的というのは財務分析や安定性分析である程度担保できます。
加えて、大きくなる企業を見極めるために、企業の成長性を分析しましょう。
もしかしたら、この企業は成長していそうだ!逆にあの企業は少し成長が鈍そうだ、、、という感覚があるかもしれません。
その感覚の根拠は「成長していそう」「成長していなさそう」の様な雰囲気を感じるだけになっていませんか?
分析の際には、もちろん定性的な見方も必要ですが、定量的に分析することも同じくらい大事です。
では、この成長性はどのように定量的に見れば良いでしょうか?
財務諸表から読み取る成長性
成長性を定量的に分析することで、企業の未来の姿が見えてきます。
具体的にはどのように算出していけば良いのでしょうか?
今回はEBITDAという指標を用いて、企業価値の算出を目指します。
①営業利益を見る
成長性を見る際、筆者は営業利益を見ます。
なぜ当期純利益じゃないか?というと、営業外収益や特別損益が関係してくるからです。
会計の話になりますが、当期純利益の計算は以下の手順で行われます。
営業利益 + 営業外損益 + 特別損益 ― 税金 = 当期純利益
なので、当期純利益を計算するまでに「特別損益」や「税金」が加味されてしまいます。
特に「特別損益」は一時的な利益(土地や有価証券の売却益)を計上することもあります。
従って、当期純利益は必ずしも企業の力を反映している訳ではないと言えるので「営業利益」に着目するという感じです。
(※企業の利益構造によっては、必ずしもそうでもない場合もありますので注意してください)
なので、成長性をみる時は営業利益の成長率を見るのが適切という訳です。
また、EBITDAは営業利益と減価償却費の合計数値です。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費
なので、営業利益を見ることは、計算上もややこしくなくオススメです。
②過去の平均成長率を算出し、将来の成長率を推測する
営業利益の成長率を見てみます。
過去3年間くらいの成長率ではダメです。
なぜかというと、過去3年は「景気が良かった3年間」かもしれないし、「景気が悪かった3年間」かもしれないからです。
景気の循環も考え、筆者は過去10年程度を目安にしています。
まずは、過去10年の「営業利益」の成長率を見てみます。
例えば、2006年~2015年までの成長率が50%だったとき、平均成長率は5%となります。
平均成長率を求める理由は、過去10年は5%で成長できたのだから、事業環境が大きく変化しなければ、今後5~8年も5%程度の成長率で成長するのではないか、と考えているからです。
これは、企業の力は大きな環境変化や不祥事等がない限り、そこまで急激に変化しないと仮定しているからです。
(※ちなみに、筆者は過去の成長率を6割~8割掛けし、保守的に見積もります。安全な予測ができると考えているからです。)
③将来、どのくらいの営業利益になるか計算してみる
では、②で求めた成長率を参考に、将来の営業利益を算出してみましょう。
ここでは長期的な企業価値予測を目的としているので、5年−8年後くらい(企業によって異なる)の営業利益を算出します。
具体例を用いて計算すると、こんな感じです。
次に、減価償却費を算出します。
減価償却費は売上等の規模に連動して大きくなると考えられるので、現状の減価償却費の割合を求め、その数値で算出します(今回は減価償却費=売上の2%程度と仮定しています)
この後、EBITDAを算出します。
EBITDAに平均的なEV / EBITDA倍率を掛けます。
このEV / EBITDA倍率は景気や業界によって大きく異なるので、分析企業業界のEV / EBITDA倍率を用いて計算するようにしてください。
今回は3つのレンジで算出してみました。
おまけ 株価予測(※注意事項あり)
算出した企業価値を発行済株数で割り、予想株価を算出します。
算出した理論的な5-8年後の株価と現在の株価を比較します。
①魅力的なら投資可能
②魅力的じゃないなら、魅力的な株価になるまで投資を延期
という判断ができます。
※注意事項※
EV / EBITDA倍率を用いた企業価値と株価の予測算出方法は少し複雑で、マルチプル法はM&Aの際に良く使用されます。
ですが、正直なところ個人的には株価の予測には向いていない側面が強いと思います。
株価の予測に使えるのは、成長率の部分でしょうか。
その成長率を元に、EPSが成長していく様なモデルの方が良いかも知れません!
まとめ
結論として言えるのは、成長率だけで企業を判断することは非常に危険だということです。
成長率だけをみると、数値に騙されやすくなってしまいます。
もしかしたら、あなたが分析した企業は安定した営業外収益を持っている企業かもしれません。
その場合は経常利益で計算を行う方が適切かもしれません。
なので、その企業に合った、適切な数値を選択し分析してください。
また、一概に「成長力がある」=「優良な企業」とは言えません。
利益の成長性だけでなく、利益の質や安定性も同時に見なければ、企業が良い成長をしているのか分かりません。
なので、財務面や安定性も分析が不可欠です。
加えて、定性的な分析も大事です。(詳細は定性分析をご覧ください)
もし、成長性が良い企業の財務分析や定性分析を行い良い企業と判明すれば、その企業は非常に優秀な企業で、優良な投資対象企業と言えるのではないでしょうか。
一方で、企業には簿外情報がある可能性があります。
例えば、裁判関連や隠れ負債等です。
これが顕在化したら企業価値は一気に変動します。
わからない情報は常にあるものと割り切り、分散投資することで、リスクを低下させましょう。
分散投資の詳細はこちらをご覧ください。