企業分析に欠かせない! DCF法とは?【投資用語解説】

DCF法とは?

DCFとは「Discount Cash Flow」の頭文字です。

上記を用いた企業価値の算出方法を、DCF法と呼んでいます。直訳すると『割引キャッシュフロー』です。

DCF法とは企業の価値を算出する際に、割引キャッシュフロー『将来のキャッシュフローの現在価値)の合計が、その企業の価値と考える方法です。

つまり企業価値評価、株価分析の場面で使用する手法ということになります。

 

 

具体的に、DCF法で企業価値を算出するのに必要な要素は以下の3つです。

  • キャッシュフロー情報
  • WACC(割引率)
  • 成長率

細かい説明は下でしていきます。

 

DCF法の例題はこちらもご覧ください。

 

 

キャッシュフロー(CF)とは

キャッシュフロー(一般的にCFと略されます)は『実際の』お金の流れを表します。

 

なぜお金の流れが企業の価値になるのか

例えば次のような企業Xがあるとします。

 企業X

売上高:1,000円
仕入 :200円
人件費:300円
(1年間あたり)

この企業を1年間経営すると1000円の売上に対して仕入れと人件費で500円を支払い、500円のお金を得る事になります。

ではこの企業の1年に価値をつけるとしたらいくらにしますか?

500円を得られるということは、つまり500円の価値しかありませんよね。

つまり得られるキャッシュフロー=企業の価値とする考え方は、その企業を経営した時に得られる”お金”を企業価値としているのです。

 

会計上の損益との違い

また”お金の流れは会計上の損益とは違うこともある”ということに留意する必要があります

例えば先ほどの企業Xで利益とキャッシュフローについて考えてみます。

 企業X

売上高:1,000円
仕入 :200円
人件費:300円
純利益:500円

この時、企業Xの利益は500円で、企業Xのキャッシュフローは、1,000−200−300=500円 となっており、利益とキャッシュフローは同じになっています。

 

次に、企業Yを考えます。

 企業Y

売上高  :1,000円
仕入   :200円
人件費  :250円
減価償却費:50円
純利益  :500円

*減価償却費・・・投資額が分割して経費として割り振られた費用。(例えば事業用に200万円の自動車を購入した場合、200万円全額は購入した年の費用とはならず、4年間で分割計上され、年50万円ずつ費用としたりします。この時発生する年50万円が減価償却費と言われます)

 

この時、企業Yの純利益は500円ですが、企業Yのキャッシュフローは、1,000−200−250=550円となります。

減価償却費がキャッシュフローとして差し引かれないのは、実際にはお金を払っていないからです。

利益には実際に入ってきたお金以外に過去に払ったお金や未来に受け取るはずのお金等も計上されているのでお金の流れとは似て非なるものです。

したがって、企業Xと企業Yは純利益は同じですが、キャッシュフローは違うということになります。

つまり、会計上の利益は同じでもお金の流れが違うため、企業Xと企業Yは純利益は同じですが、企業価値は異なる結果になります。

 

 

永続した場合の価値を考える

ここまでは簡単な例として1年間の企業活動の価値評価をしました。

しかし、実際には企業の活動は半永久に続き、企業価値の評価にはそれらも含めた評価もしなければなりません。

では、企業Xが永続的に継続する企業だった場合はどうでしょうか?

毎年500円のCFが永遠に入ってくるとすると、、、

企業X=500円+(1年後の500円)+(2年後の500円)+・・・+(n年後の500円) となります。

 

でも、少し考えると、将来の500円の価値=今の500円の価値なのか?という疑問が出てきます。

特に「n年後の500円」って、いくらだよって感じですよねw

もしかしたらn年後は超インフレってるかもですし。。。

 

なので「n年後の500円」の価値を「現在における『n年後の500円』の価値」に直さなければ、正確に価値が測れません。

将来の価値を「現在の価値」に修正するということです。(*修正方法は後述)

この、将来の価値を現在のものさしで測ったものを『現在価値』と言います。

 

したがって、企業価値=将来のCFの現在価値の合計 ということが出来ます。

なので 企業X=500円+(1年後の500円)の現在価値+・・・+(n年後の500円)の現在価値 となります。

 

では、将来のCFの現在価値は、どのように算出できるのでしょうか?

まずは、現在価値の概念から入っていきましょう。

 

現在価値(Present Value)を求める

現在価値とは、言葉通り現在の価値のことで、この考え方は、『未来の100円は現在の100円ではない』という考えから来ています。

具体的に考えていきましょう。

 

まず、問題です。

 ①いま持っている100万円

 ②明日もらう100万円

どっちに価値があるのでしょうか?

 

「1日くらい変わらないだろ」と思うかもしれませんが、①いま持っている100万円 の方が価値があります。

なぜかというと、①いま持っている100万円 を明日まで運用すれば利息が付くからです!

 

例えば、1日で利息が5%つくなら(高すぎますが)利息は5万円です。

①いま持っている100万円+5万円(利息) > ②明日の100万円 ですよね。

 

この例では、①いま持っている100万円 は明日になれば 105万円 になります。

つまり ①いま持っている100万円 は ②明日もらう100万円 より価値があるということです。

 

時間が経過すれば、運用した利息が獲得できるので、時間軸が違うと同じ金額でも価値が違うということです。

※2日後の100万円の価値は、100円 × 1.05 × 1.05 = 110.25万円 です。

 

では逆に、②明日もらう100万円 の価値は、今日時点ではいくらなのでしょうか?

また、1日の利息5%で考えてみましょう。

 

時間軸が違うと価値が違うので、「明日の100万円の今の価値」を計算します。

同様に運用したと考えると、以下の式が成り立つはずです。

③「明日もらう100万円の今の価値」 を1日運用 = ②明日の100万円

 

③「明日もらう100万円の今日時点の価格」 × 1.05 = ②明日の100万円  ですね。

 

③100万円 ÷ 1.05 = ①いま持っている100万円 ということになります。

この③100万円 ÷ 1.05 が ②明日もらう100万円 の今の価値=現在価値です。

 

まとめると、

現在価値=将来のCF(価値)を (1+利息)のN乗 で割ったもの

数式化すると、こんな感じになります。

 

 

割引率に使われるWACCとは

先述の現在価値を評価するための割引率には”WACC”というものが使われます。

WACCは非常に分かりにくいですが、WACC=投資家や債権者の期待する利息 と言うことができます。

 

投資家や債権者が、企業にどれだけのリターンを期待しているか、ということです。

 

WACCの数式はこんな感じです。

WACCの導き方は少し複雑なので、βとWACCを参照してください。

 

DCF法の具体的計算

DCF法にて企業価値評価を行う場合、CFや成長率等の情報が必要だということは、上述した通りです。

とはいっても、企業ごとに成長スピードが異なりますし、成長しない年もあると思います。

このような現状に対応するため、下記のような数式を用いて、DCF法を実施します。

 

【DCF法簡易公式】

数式に関しては、高校で習う数列の応用ですので、なぜ上記数式になるか考えてみてください。

 

早速、DCF法を実践してみましょう!

下記のような企業Xを考えます。

この場合、DCF法にて企業価値を算出すると、以下のようになります。

企業Xの企業価値= 200  ÷ ( 10% − 6%) = 5,000

 

次に、下記のような企業Yを考えます。

この場合、DCF法にて企業価値を算出すると、以下のようになります。

企業Yの企業価値= 200  ÷ ( 10% − 3% ) = 2,857.143…

 

この時、成長率が3%となっているのは、ROEの内50%が配当金に、残りの50%が次期への投資(成長)に向けられているため

成長率= 6% × 50% = 3% となります。

 

最後に、下記のような企業Zを考えます。

この場合、DCF法にて企業価値を算出すると、以下のようになります。

 

 

DCF法ではこのように企業価値を算定していきます。

慣れれば簡単に価値算定を行えますね!

 

 

DCF等の分析が面倒な場合は?

正直DCF法で色々算出して、現在の株価が適正か検証した後に、将来性を考えて投資する。。。というのはかなり面倒ですw

Excelとか作ってるならまだ楽ですが、そもそもβの情報が手に入りにくかったりします。

なので面倒な場合は、機械的に分散投資するに限ると思います。

 

管理人が行なっているのはWealthNavi(ロボアド)による分散投資や100円投資IPO投資などです。

どれもオススメです!

 

まとめと注意点

今回はDCF法に関してでしたが、いかがだったでしょうか?

数式自体は簡単で慣れればわずかな時間で企業価値評価ができるようになりますが、実はこのDCF法は非常に難しいです。

なぜなら 将来のCF ②WACC ③成長率 の3つの要素を自分で決定しなければならないからです。

 

将来のCF

一番予測が難しい指標ですこの数値が予測可能ならば、DCF法での算出は半分完了したと言ってもいいでしょう。

比較的予測がしやすい業界は大手消費財メーカーや電力会社等です。

これらの業界企業が提供するのは人々の生活必需品であり、需要が減りにくいので

好景気でも不景気でも、安定した売上や利益を確保しやすいことが推測できます。

 

しかし、例えば電力会社等は原材料を海外から輸入していますので、仕入れ値が為替や原料価格の変動に左右されやすいです。

・・・なので、完璧な予想は難しいですね。

 

一方で、そもそもCF予測自体が非常に難しいのは、安定したCFを得られる保証のない企業です。

最近の例で言うと、投資を大規模に行っている商社等が挙げられます。

 

記憶に新しいかもしれませんが、幾度かの原料価格の急変動により、多くの大手商社が赤字に陥りました。

投資活動はリスクを負っていますので、結果として利益やCFにもリスクが織り込まれることになります。

逆に、これらの予測が難しい企業の情報でCFが予測できれば、非常に有益な情報となります。(例えば、ある商社が投資している油田・炭鉱が操業停止した etc…)

なので、情報収集は常に欠かさず行いたいですね。

 

WACC

計算あるのみ、です!(詳しくはβとWACCをご覧ください)

ただし、実際に株式市場が企業の期待リターン(資本コスト)を反映しているかは分かりません。

株式市場が知らない情報は、市場には反映されないからです。

そういった意味でも、情報の入手は常に大事ということですね。

 

成長率

成長率は企業のCFの成長性(ROEと配当性向より算出)から予想します。

一方で、分析してもそれが正しい数値とは限りません。

成長性と企業価値&株価推測の記事でも書きましたが、もしかしたら、その企業には隠れた負債や裁判等があり、

そのリスクが財務諸表には反映されていないかもしれません。

しかし、分析することで、確実性を高めて投資を行えることは間違いないと思いますので、分析することをオススメします。

 

※ DCF法の例題&解説はこちらもご覧ください。

>>ファイナンス例題集【DCF、株価、デュレーションなど】

DCF ディスカウントフリーキャッシュフロー

ここでは4年目まではFCFを各年算定し、5年目FCFは一定として算出します。
(将来の成長は不確定のため、5年目以降は消極的に成長しないと仮定しました。)

財務データから以下の情報を入力すれば、簡単に企業価値評価が出来ます。(負債比率0%・税率35%と仮定)
*簡略Verのため、投資と運転資本増減は一まとめで概算しています。

 

総資本 資産成長率 利益成長率
入力
減価償却費 営業利益 資本コスト
入力

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目以降
営業利益 0 30 40.7 7
税引き後営業利益 0 30 40.7 7
減価償却費 0 50 -50 7
投資+運転資本増減 0 0 -20.2 20
FCF 100 0 40.7 7
DCF 100 0 40.7 7
企業価値 100

<計算式>

・FCF = 営業利益+減価償却費-(投資+運転資本増減)
・営業利益 = 前年度営業利益 × (1+利益成長率)
・税引き後営業利益 = 営業利益 × (1-35%)
・減価償却費 = 前年度減価償却費 × (1+資産成長率)
・投資+運転資本増減 = 総資産 × 資産成長率 + 減価償却費
・5年目以降のFCF総和(4年目での現在価値) = 4年目のFCF ÷ 資本コスト

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